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魔法少女リリカルなのは 〜彼の者は大きなものを託される〜
第一羽 少女たちの想い
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はぁ〜?」

「ツーン」

「ご、ごめんってば〜」

「ツツツーン」

「……」

 必死に声をかける山本くんに対して、なのはちゃんは無視を貫く。

 流石に居た堪れなくなった彼の側に、私とフェイトちゃんが近づく。

「あ、あの、そんなに落ち込まないでくださいね?」

 今にも地に膝と手が付いてしまいそうなほど落ち込んでいる彼に、私は声をかけた。

 ホント、肩からズーンって文字とダークブルーの背景が見えそうなほどに落ち込んでいる彼に、私とフェイトちゃんは苦笑い。

「なのはも本気で怒ってるわけじゃないから、ね?」

「ああ、はやてにも同じこと言われた……けどさ〜」

 フェイトちゃんも声をかけるけど、それでも山本さんは立ち直れない様子だった。

「――――女の子が怒ってる姿って、好きじゃなくてさ」

「え……」

 その言葉を聞いた瞬間、目眩がした。

 ほんの一瞬の目眩。

 視界が揺らぐってだけの症状。

 けど、その一瞬が私に見せたものは、あまりにも懐かしくて……。

「すずか……」

「フェイトちゃん……」

 落ち込んでいる山本さんを他所に、私とフェイトちゃんは互いを見つめて感じたものを共有した。

 きっとフェイトちゃんにも見えたんだと思う。

 山本さんに、あの人の面影が重なる姿を。

 二年前に亡くなった、なのはちゃんの義兄さん。

 私達に優しかった人。

 私達が大好きだった人。

 私が、初恋をした相手。

 けど、届かなかった相手。

 あの人が亡くなってから色んな人と出会ってきたけど、こんな感覚はなかった。

 こんなに懐かしくて、切なくて、愛おしい気持ちは……始めてだった。

「あ、あの」

「ん、なんだ?」

 気づくと私は、彼にそのことを聞きそうになっていた。

 あなたはあの人のこと、知ってますか? って。

 ……けど、知らないはず。

 さっき聞いたけど、山本さんはちょっと前に海鳴市に引っ越してきたばかりらしいから、あの人のことは知らない。

 だから聞いても意味がないし、なのはちゃん達の前で聞くのは過去の傷をえぐってしまうかもしれない。

「えと……なのはちゃん、すごく良い子だから、それだけ反省してるなら大丈夫ですよ!」

 私は無理やり自分の中の話題を逸らし、彼を励ます言葉をかけた。

 彼は私の心情を知らず、励ましの言葉をそのまま受け取り、そして笑顔で返した。

「ありがとう、すずか」

「あ、う、うん」

 ずるいよ。

 私はそう思って、彼を睨みつけかけた。

 だって名前で呼んで、ありがとうだなんて……。

 そんなの、あの人
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