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魔法少女リリカルなのは 〜彼の者は大きなものを託される〜
第一羽 少女たちの想い
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 そんな人が、私達の中にはいたんだ。

 彼を見て、はやて達も同じことを思ったはずだ。

 だって、あの人は私達にとって大事な人だったから。

 私達が愛した、なのはの義兄さん。

 あの人の面影が、あまりにもはっきりと重なるものだから、思わず泣きそうになってしまう。

 そして私は、改めて思う。

 やっぱり春の桜は、色んなことを懐かしく思い出させてくれるんだってことを。


*****


「もう二人とも、勘弁してよ〜!」

「ほんまごめんな〜」

「なのは、ごめんってば」

「ツーン」

 登校中、私と彼、山本 湊飛さんは拗ねるなのはちゃんへ謝り倒していた。

 ああいったおふざけは私の性分、みたいなもんやからなのはちゃんも慣れていると思うんやけど。

 あんまり恋愛面は弄らんほうがええんかもな。

 ……いや、私自身、あまり恋愛の話しを弄られるのは好きやない。

 二年前のことがあるわけやし、まだ折り合いをつけれてないのも事実や。

 せやけど、いつまでも引きずることはあの人が望んでいることとちゃうし、もうそろそろ笑って振り返れるくらいには立ち直りたい。

 だからなのはちゃんがイヤでも、いつもの私らしくふざけてみたかった。

「えっと、八神だっけ?」

「はやてでええよ。 私も湊飛さんって呼ぶし」

 拗ねるなのはちゃんをフェイトちゃん達に任せ、みんなの背を追うような形で彼と会話をする。

「悪い、俺のおふざけに付き合わせて」

「え?」

 みんなに聞こえないような音量で、彼は唐突に謝ってきた。

 私はなんで? と聞くと彼は申し訳なさそうな表情で答える。

「いや、俺のせいでなのはを怒らせたみたいだし、はやてが喧嘩別れみたいな形になったら申し訳ないなって」

「あ……っ」

 なんでやろ。

 なのはちゃんと戯れあっている時にも感じた懐かしさが、心の中で蘇る。

 初対面の人に感じた懐かしさは、きっと春の桜のせいだと思って振り払ったはずなのに、再び私の胸に溢れ出してくる。

 彼は……湊飛さんは、あの人に似てる。

 二年前に亡くなった、なのはちゃんの義兄ちゃんに。

 私達より年上で、頼りになる人やった。

 大人っぽい、せやけど悪戯好きで、なのはちゃんとフェイトちゃんがよく巻き込まれてた。

 そのくせなのはちゃん達が怒るとすっごく落ち込んで……ほんま、やめればええのにって私は笑ってみていた気がする。

 そんな彼と湊飛さんが重なるなんて思っているのは、私もまだまだ折り合いが付ききれていないという意味で……。

 目の前の彼には失礼なことやと思うから、私はもう一度振り払おうとする。
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