30話 調整者 3.5
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めてはならない。人が成長していくためには戦うことや競争が必要なんだ。統一しようと思えば、ティターンズかエゥーゴを選択したはずだが、両勢力とも未だに残っている。その間に新勢力や新思想が生まれていく」
ミハルはゴップ邸に通じる道である車行列の最後尾に付けた。
「ふう、まるで蛇の生殺しね。喰う喰われるを鑑賞しているわけ」
「平和思想なんて夢物語なのさ。平等など停滞と同意義なんだろう。そんな彼に一番の有効策は競争原理や成長の糧になる代物を紹介できるかどうかだ」
「それがガエルさんの」
「ああ。先方はどうやら正義感があるらしいな。バウアーが議会提出し、連邦の在り方を再編する。それはティターンズを切り捨てるやり方だ。しこりを残さんためにも両者が対等に試行錯誤しなければならない。それが本来の在り方であり、人類の為だ」
「・・・私は善悪を区別していたのね。平等でなく、公平に見ないと正しい情報を伝えられない」
「そうだな。勝てば官軍と言ったもんだが、元来善悪など多数派が決めてきた手法だ。人が存続していくための知恵でもあるが、ゴップは善悪の判断を常に命題として市民に課すようなことを暗にしている」
何も意見や政策が無い政治家がキャスティングボードを握る立場は保身の為だと考える。ゴップについて、カイはそれを否定していた。今競う者達の暴走を調整する役割であると。
そして実は争いを好む。
「人にはそれぞれ役割がある。あんな風体が指導者としては向かないだろう。自分を弁えている。そこで出来ることを彼はしているだけだ。それを無責任と罵るならば、彼は相手にしない。彼と話す為には彼の言葉を理解できることが何より重要だ」
「・・・達観ねえ。私は好きになれそうにない。例え人の事を考えていても、政治家は目の前の困った人を助けるのが仕事でしょ」
「それは彼の派閥の下っ端、若しくはティターンズ、エゥーゴの仕事だ。人生は短い。彼は全てを見極めた上で彼の役割をしている。ミハル、あんまり人に期待することは良くない。かくもオレもお前も書き物しかできない。それを世論に訴えかけても、世界に共感されるほど手は長くなれる訳がない」
「カイ、貴方の言い方も卑怯ね」
「感情論でするようだと仕事ではない。訴えかけるにはそれなりの理由が必要だ。ミハル、お前も仕事を続けていくならば、その姿勢を覚えるんだ。今、道に倒れている人を見かけたら助けてあげる、それぐらいの許容で良い」
「凄く矛盾していない?可能性を信じるのに自分の許容を弁えて、世界の重鎮たる彼が何もできないなんて。しないだけじゃないの?」
「彼は有権者からの支持を得ることはできても、有権者に指示することはできないんだ。それが政治家だ。彼らは有権者の支持と指示を仰ぐことが仕事さ。それが
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