第百話
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を失ったムカデに動くことは適わず。
「よっしムカデ野郎、そこ動くなよ」
正面に立つクラインを初めとして、パーティーメンバーたちが十本足ムカデを取り囲むように、逃げられないように武器を持って集結する。囲んでタコ殴りとは少し気が引けるところもあるが、そんなことを言っている暇はない。メンバーは思い思いの武器を手に叩きに行き、俺も日本刀《銀ノ月》を構えて向かおうとしたが、隣にいるリズは動こうとしていなかった。
「リズ、どうした?」
俺の頭の上に乗ったままのピナとともに、動こうとしないリズに疑問をぶつける。正確には行こうとはしているのだが、どこか拒んでいるような感じがしている、というか。何にせよ、動こうとしていないのは確かなリズは、十本足ムカデをチラリと見ながら。
「……キモい……」
絞るような震える声でそれだけ呟いた。一瞬自分のことかと思って肝が冷えたが、ピクピクと震えた指で十本足ムカデ――もう一本たりとも足はないが――の方を指差しているので、どうやらあの巨大ムカデのことらしく。
「……さっきぶん殴りに行ったじゃないか」
「さっきのはまだいいけど……ダメ! 動きがダメ!」
もぞもぞと動く巨大なムカデ――確かに嫌悪感が湧いてもおかしくない外見だった。もう一つの現実とも言われるこのVRMMO、外見がリアルに近すぎて戦えない、というのは割とよくある話らしく――アスナも幽霊などが出る場所は行きたがらない、という話はキリトから聞いた覚えはあるが、リズからそういった話を聞くとは珍しい。
「リズって虫苦手だったのか?」
「そ、そうよ。悪い?」
特にあんなデッカいのとか――と身体を震えさせながら熱弁していたが、次第にこちらの顔を見てムスッとした表情に変わっていく。リズのそんな表情は、こちらへの不満を隠そうとしていない時だ、と経験から判断する。
「……何よ、その顔は」
「え?」
こちらの表情も知らず知らずのうちに呆けた表情になっていたらしく、俺の顔を見上げるリズにそう言われて、俺自身の顔をペタペタと触る。自身の気持ちをどうやって説明するか、それを考えるように、そのまま癖のように髪をクシャクシャと掻く。
「いや、リズって虫苦手だったんだなって。当たり前だけど、まだ知らないことも多いな」
「そりゃ……そうよね」
何だかんだともう長い付き合いになっているが、まだまだお互いについて知らないことも多いと。言われてみれば当たり前のことに、二人して顔を突き合わせる。
「……ま、そんなこと言ってる場合じゃないわね。さっさとあのキモいムカデ倒しちゃわないと!」
「……そうだな」
苦手なんて言ってらんない、と意気込むリズを守るように前に出て、新生日本刀《銀ノ月》
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