第百話
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「もういっぱぁつ!」
第二打。ムカデの足を覆っていた甲殻が完全に崩壊し、根元と同じく柔らかい皮膚を晒した。
「ショウキ!」
「ルクス!」
リズとノリの俺たちに向けた叫び声――どちらも、呼ばれた意図は分かっていた。懐に近づくのが難しかろうと、ただ足を切り裂くだけなら、さほど難しくはなく。俺とルクスは人間ならば膝の部分にあたる、足の中ほどから断つことに成功する。
これで残る足は三本になりながらも、まだまだ十本足ムカデの勢いは揺るがない。足を切り裂かれたことによってか、さらに周囲に火炎を撒き散らし始め、急いでリズとノリが後退する。彼女たちの悲鳴をバックミュージックにしながら、一際巨大な火炎弾を斬り払う。近くにいたルクスはタンク役となったテッチのカバーに行ったらしく、今あるのは俺とムカデの足のみ。
火炎弾となお暴れまわるムカデに、前衛は退却せざるを得なくなるが――この新たな日本刀《銀ノ月》ならば。目の前のムカデの足をその覆われた甲殻ごと、切り裂くことも可能な筈だ。周囲に撒き散らされる火炎弾を避けながら、俺は少しでも甲殻の薄い場所を見破らんと――
――目の前の足が地面に落ちる光景を、見た。
「ナイス、ピナ!」
そんなリズの声に、自身が放つことが出来る泡を纏って火炎を軽減し、ムカデの足を根元から噛み切ったピナの姿を見る。その牙にはソードスキル同様の光が垣間見え、恐らくはシリカのスキルの一種なのだろう。
「ショウキさん、ピナをお願いします!」
遠くから聞こえてくるシリカの声。泡でダメージを軽減出来るとはいえ、これ以上はピナにキツいだろう。一閃にて炎を切り裂くと、ピナが切り裂いた炎の狭間から俺の頭に着地する。
そのまま高速移動術《縮地》で巨大ムカデから離脱しつつ、ダメージを負ったムカデと戦況を離れた場所から観察する。残る足は僅か二本ながら、それでも邪神の名に違わぬ気配を纏わせながら、その残った二本を死神の鎌のように構えた。……のも、もう遅い。
「あーもう、いつのまにあの子……」
《縮地》によって後退した先でポーションを飲んでいた、メイスを肩にかけたリズが、嬉しそうにした顔を手で覆うという矛盾に満ちたことをやってみせ、俺は十本足ムカデに手を合わせる。そこにいたのは、ムカデの足にそれぞれ肉迫していたキリトとアスナ。共に前衛をしていたキリトはともかく、今の今まで後方で魔法の支援を担当していたアスナはいつのまに。本来なら巨大モンスターを前にして、そんな思考が出来るほどの余裕はないが、何だか力が抜けてしまったような感覚に襲われる。
キリト夫妻の攻撃を受けて最後の足が切り裂かれたムカデは、その巨大な胴体を大地に縛られてしまう。もぞもぞと動き回ろうとはしていたが、もはや足
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