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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十九話 オーディンからの使者
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ン文書をラインハルトに渡しに来たのか。

「卿に会いに来たのだ。二人だけで話したいのだが」
俺はケスラーを自室に入れた。
「久しぶりですね。ケスラー大佐」
「ああ、本当に久しぶりだ。それにしても准将か」

「運に恵まれました」
「運だけで出世するほど甘くはないさ。遅れたが戦勝おめでとう」
「有難うございます。それで今日は何を」

「グリンメルスハウゼン閣下のことだ。閣下はもう長くない、夏風邪をひいてな、それがこじれて気管支と肺に炎症が起きた。年は越せまいとのことだ。」
「そうですか…」
やはりそうなったか。

「皇帝の闇の左手は解散する」
「まさか!」
「閣下が病に倒れた後、陛下が密かに見舞われた。その際、閣下と陛下の間で解散が決められた。取り消しはない」
皇帝の闇の左手が解散か…。

「卿に伝えておくことがある。我々が集めた秘密、情報は有る人物にゆだねられる事になった。しかし卿に関する文書は全て破棄された」
「どういうことです」
「グリンメルスハウゼン閣下が、卿には何者にも縛られて欲しくないと」
「……」
ラインハルトが俺を縛ると思ったか。

「グリンメルスハウゼン閣下のご厚意に感謝します。閣下が亡くなられたら、大佐はどうなります」
「多分、辺境星域へ行く事になると思う。准将に昇進してな」
「そうですか」

ケスラーをラインハルトの参謀長にしてはどうだろう。この男なら十分にあの男を抑えられるだろう。
「ケスラー大佐。ミューゼル少将の参謀長になる気は有りませんか」
「ミューゼル少将の参謀長?」
「ミューゼル少将は今回の戦功で中将に昇進します。次の戦いでは一万隻以上を指揮する。その参謀長です」

「しかし、私がなれるのか」
「ミュッケンベルガー元帥から参謀長に相応しい人物を探せと言われています。ちなみに次の戦いは来年早々になるでしょう」
「しかし、私はミューゼル少将と面識がない」

「これから会うのでは有りませんか」
「…卿、知っているのか」
「想像はつきます」
「……会ってから判断しよう。それでいいか」
「はい」

ケスラーが俺に参謀長を引き受けると返事をしたのは、一時間後だった。俺はその答えを持ってミュッケンベルガーの所へ行った。幸いミュッケンベルガーはケスラーの事を知っていた。例のサイオキシン麻薬事件で軍務尚書エーレンベルク元帥よりケスラーの事を聞いていたらしい。すんなり了承し、エーレンベルクに掛け合うと言ってくれた。
少しずつでは有るがラインハルトの下に人材が集まりつつあるようだ。飛躍するのはクロプシュトック侯事件だが、さてどうなるか…。

帝国暦485年 3月
ヴァンフリート星域の会戦。帝国軍、同盟軍に圧勝する。
ヴァンフリート4=2の戦い。帝国軍、地
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