三十二話:戦う意義
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――引けなかった。
「は…や…て……」
それは最後の最後で情が勝ったからではない。純粋に理性が今撃っても無駄だと判断したからである。スコープ越しに映るのはヘリを護送するために現れたはやての姿であった。今撃ってもはやてに撃ち落とされるか防がれて自分の場所を知らせるのが関の山である。そう判断を下し、切嗣は引き金から指を放す。
「まさか、僕の思考が読まれるなんてね……」
はやては予測していた。一度目の攻撃の後にさらに攻撃がある可能性を。相手の真の本命はヘリだということを。その予測の通りに彼女はガジェットの群れを完全消滅させた後に指令室に戻ることなくヘリの護衛に回った。だから切嗣は警戒して撃つことが出来ない。
ヘリが射程圏内から去っていくのを見送りながら切嗣はホッとする自身の心に顔を歪めさせる。喜んでしまった、自分の大切な者を殺さないで済んだことに。自分は他人の大切な者を好き勝手に奪っているというのに。安堵した自分が殺したいほどに憎い。
自己嫌悪感から血が出るほどに唇を噛みしめて立ち上がる。いつまでもここに留まっているわけにはいかない。時間が経てば調査隊が派遣されるかもしれないのだから。彼はふらふらとした足取りで歩き出しながらヘリの消えた空に向かいうわ言のように呟く。
「大丈夫……次はちゃんと―――殺すから」
だから、全ての犠牲が報われる世界をください。
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