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魔法少女リリカルなのは 〜彼の者は大きなものを託される〜
プロローグ
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ない。

 だから余計に混乱して、私は言葉が出なかった。

「あ……れ?」

 彼自身、なんで自分が泣いているのか分からないみたいで、慌てて両手で目蓋を拭いた。

 心配になる私に、拭き終えた彼は目尻を赤くしながらも頭を下げる。

「ご、ごめん! 急に泣き出して!」

「う、ううん、大丈夫だから!」

 動揺しながら謝る彼に、私も慌てて返事をする。

 なんか色々とメチャメチャな気がするけど、とにかく私は一旦落ち着かせるために、深呼吸をした。

「ふぅ……あの、お隣さんって?」

 落ち着いた声をで聞くと、彼は私の実家……喫茶店、翠屋の隣に建つ木造二階建ての一軒家を指差した。

「俺は山本 湊飛。 そこに住んでるんだ」

 山本。

 その苗字を、私はよく知ってる。

 四年くらい前にこっちに引っ越してきたみたいで、その頃から私の家族と仲がいい。

 翠屋の常連だし、近所付き合いも良い。

 私も何度かお話ししたことがあるから、親しい関係だと思う。

 けど、息子さんが病気だから色々大変なんだって言ってて……。

 そう言えば、去年に手術が成功してリハビリしてたんだっけ?

 ということは……

「君が山本さん家の息子さん?」

「うん、そうそう。 昨日まで自宅療養だったんだけど、今日の入学式を以て自由外出になったんだ」

 そう言って見せた彼の笑顔は、とても重篤だった人とは思えないほど明るくて、良い意味で普通の人の姿だった。

「それで今朝、母さんから翠屋の人に挨拶してこいって言われたからさ、丁度見つけたから声をかけたんだ」

 泣いたのは俺でも予想外だけど……と、苦笑混じりに言って、私も同じく苦笑で返した。

 さて、と彼は右手を差し出した。

「ちょっと変な感じになったけど、改めまして。 山本 湊飛だ。 15歳の高校三年生、よろしく」

 そう言って彼は、大人びた感じの小さな笑みを見せた。

 桜の花びらが舞いながらのその姿は、私にとって新たな始まりを予感させた。

「私、高町 なのは。 なのはって呼んで」

「……うん」

 彼の右手を握り返してそう言うと、彼は嬉しそうに、そして噛み締めるように頷いた。

「それじゃ……なのは」

「――――!?」

 その瞬間、私の目に疑うようなものが映り込む。

 彼の……湊飛さんの姿が、“あの人”の姿と重なって見えた。

 春のように優しくて。

 春のように涼しくて。

 春のように柔らかくて。

 ずっと側にいて欲しかった、大切な人。

 私の……私達の、大切な人。

 花咲くような笑顔がなによりも印象的な彼と、湊飛さんの姿が重なって……瞬きをし
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