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魔法少女リリカルなのは 〜彼の者は大きなものを託される〜
プロローグ
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 翠屋の一家を見て、何かを感じたのだろう。

「分かった。 行こうか」

 だったら、この鼓動に従い、俺は彼女に声をかけるべきだろう。

 運悪く、制服の彼女以外の一家は店の中に戻ってしまったけど、心臓の鼓動は止まらない。

 俺は鼓動に従い、彼女に声をかけた。

 栗色の長い髪を一本に束ねた、綺麗な少女に。

「おはよう、お隣さん!」

「え?」

 声をかけると、彼女は疑問符を浮かべながらこちらを振り向く。

 振り向く際に、彼女の周りを桜の花びらが舞った。

 その時、思ったんだ。

(――――ああ、やっぱり君には、桜がよく似合う)

 その感情はきっと、俺の感情じゃない。

 不思議な感覚だ。

 温かくて、切なくて、幸せな感情が溢れ出てくる。

 きっとそれは、無念なのだろう。

 この子に対する無念。

 なんでなのかなんて、他人(おれ)には分からないけど……だけど、他人だけど、溢れ出てしまう。

「あ、あの……?」

 彼女は不安げな表情で俺を見つめる。

 あれ……視界がぼやけてる。

 頬を、何かが伝ってる。

「あ……れ?」

 両手で触れてみて、気づいた。

 これは――――涙だった。


*****


 私、高町 なのはは、今日から中学生になります。

 小学三年生の頃に魔法に出会って、色々な事件に関わってきたけど、こうして普通の学生として過ごす時間もやっぱり大切で、幸せな時間。

 小学校を卒業した時は悲しかったけど、中学生になるのはやっぱり嬉しくて、複雑な感じ。

 そんな感情で迎えた入学式当日。

 朝起きて気づいたのは、悲しみとか寂しさよりも、新しいことが始まることへの期待感が強いことだった。

 自分の中で折り合いがついたんだって、そう思えた。

 新しい制服に身を包み、小学生の頃よりも伸びた髪でサイドポニーにしてみた。

 身も心も新しい状態で外に出て、春の香りに気分が高ぶっていく。

 ああ、始まるんだ。

 そう思いながら、私は友達のいる待ち合わせ場所に向かおうとした。
 
 ――――彼に出会ったのは、その時だった。

 私よりも背の高い、細身の男性。

 今日から私が通う中学校の制服だから、同級生か上級生のどちらか。

 知らない人だけど、彼はフレンドリーに声をかけてきた。

 誰だろう?

 お隣さん?

 どれから質問しようか悩んでいると、唐突に……本当に唐突に、彼の瞳から涙が流れ出した。

「あ、あの……?」

 本当に困った。

 初対面の相手に声をかけられたと思うと、いきなり泣いたから。

 少なくとも私は何もしてい
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