銀の煌めき 1話 始まりの朝
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、魔法師としても優秀だ。だがそれゆえ、それ以外のことに疎かったり、不器用だったりする。
「ま、私にはそういう関係の人がいないから、なんとも言えないけどね」
「…考えておくよ」
帝斗の口から珍しい言葉が出た。いつもならば、拒否で押し通すのだが、この様な反応が聞けるのはほんとに珍しいことだ。
「ほんとー? きっと蒼美さんも喜ぶよ!」
「まだ、答えは出してないけどな」
珍しい答えが聞けたが、いつもとあまり変わらない帝斗である。
他愛ない世間話なんかをしながら、駅へと歩いていく。
「しかし、今日は霧が出てるな…視界が悪い」
「ほんとね…うわ、制服湿ってるよ〜」
肩や腕を触ってみると、ひんやりと冷たかった。これで体感魔法なしだったら、寒かのあまり震えていたかもしれない。
「ん、待てよ。霧にしては少し見えなさすぎないか?」
「あれ、見る見る濃くなってるよ?」
家を出た時は、全く霧なんて出ていなかったのに、今では足元も見えないほど、霧が立ち込めている。
「さすがに危ないな、迂闊に動くと何かにぶつかるかもしれない、少し霧が晴れるまで、ここに留まっておこうか」
「そうだね…、ね、よく見えないから手つなご」
「そうだな」
帝斗は私の右手をつかんだ。隣にいるのに、よく見えない。手を離せばもう見失うと思ってしまうほどに。
「うっ!」
突然帝斗のうめき声が聞こえた、と同時に私の右側、つまり帝斗が立っているはずのところから赤い液体が飛沫した。
「兄さん!!」
私が叫んだ拍子に、帝斗の左手を離してしまった。
「兄さん!!」
今度は、不安を含ませて私は叫んだ。帝斗がどういう状況なのか、濃霧で全く見えない。
そこで、私は後方に何かの気配を感じ取った。帝斗ではない、何か別のもの。
「誰!?」
私は不安を押し殺す様に、見えない何かにそう叫んだ。
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