劇場-シアター-
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び回り続けている宇宙警備隊員の一人だ。この宇宙はこのエスメラルダ、ハルケギニア大陸がそうであるように、地球人にごく近い形態を持つ星人の世界も存在していることもあれば、あまりにかけ離れた形態の生命体が存在している事だってある。獣の耳を生やした人間が存在してもおかしくないのだろう。
三人は引き続き、獣耳の女性の後を追っていく。
「ここって…劇場?」
「ええ。市街歌劇場『タニアリージュ・ロワイヤル座』よ。旅回りの劇団が演劇をしてるわ」
タニアリージュ・ロワイヤル座。トリスタニアのとある場所に建設された立派な劇場である。
ハルナの鞄を持っていた女性は、劇場の入り口からちょうど中に入ろうとしている頃だった。
「ま、待ってください!」
ハルナは彼女に声をかけて呼び止めた。ん?と声を漏らしながら、獣耳の女性は振り返る。
「どうかされましたか?本日の劇場は休演日なのですが」
「あなた、この劇場の支配人かしら?」
ルイズの問いに、女性は自己紹介を始めた。
「見たところ、貴族様のようですね。私は『ウェザリー』…この劇場で芝居をやらせてもらっている旅の一座の座長です。それで、このバッグがなにか?」
「実は…」
そこからハルナは必死に女性に事情を説明した。とはいえ、異世界出身であることを迂闊に部外者に明かすのは不味いと思い、それに纏わることをなるべく避けるよう、ルイズから耳打ちによる釘打ちを刺してもらった上での説得だ。
「なるほど、これは元々あなたのものだから、返してほしいというのね?」
「はい、大変勝手だとは思いますが、そのバッグは本当に私のものなんです。証拠品もその中に入っています。だから…」
鞄の中を確かめてほしいと懇願するハルナ。だが、相手の女性からの返答は残念…というか、信じられないといえるものだった。
「残念だけど、これは私が道中で偶然拾ったものよ。たとえ本当にあなたのものだとしても、おいそれと渡すわけに行かないわ」
「どうしてです!?」
「本当にその証拠品とやらが、あなたの持ち物だと証明できるものなのかしら?適当に言い繕って、嘘をついてこのバッグを持ち去ろうとしている詐欺師の可能性も否定できないんじゃなくて?」
ウェザリーは、実は持ち主のふりをした盗人なのではないかと勘繰っているようだ。
「そ、そんなことありません!本当に私のものだという証明の品があるんです!」
ハルナのいうことは間違っていないし、それにこれがハルナ以外の誰の物でもないという証拠は確かにそのバッグの中に入っているのだ。その中には写真付きの学生身分証明証もある。例え異世界人が確かめても、ハルナの写真が付いているに違いないそんなものがあれば、ハルナのものと思わざるを得ないはずだ。
だが、信じられないことに彼女はそれをさせもしないのだ。
「他の劇団員にとっても
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