番外編 〜最期〜
私が守っていたもの
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来なかった』そう言い残して、アキツグさんは失意のまま鎮守府を去った。
『那珂……私はさ、もうこんな思いはしたくない』
『そうだね。……那珂ちゃんも、もうイヤ……』
『私達で助けられる命は……もう絶対にこぼさない』
私は、もう二度と神通とアキツグさんのような犠牲者を出すまいと誓った。那珂は志半ばで轟沈してしまったが、私は那珂の分まで鎮守府の皆を守ろうと二人に誓い、那珂と神通の探照灯を受け継いだ。
それからもうかなりの月日が経つ。そのあとやってきた床屋さんのハルは、球磨ととても仲良くやってくれている。球磨もそんなハルととても楽しそうに日々を過ごし、二人の姿は生前の神通とアキツグさんを彷彿とさせるほどに微笑ましい。……夜戦には全然付き合ってくれないけれど。その度に胸がチクチクするけれど。
一方で、提督は隼鷹と結ばれていた。ある日の朝、顔を真っ赤にした二人から……
『昨日……ケッコンした』
と報告され、私たち鎮守府のメンバーは皆、二人のことを祝福した。その後も色々とあったが、二人の愛情は今もしっかりと育まれている。
その二組を見るたび、私は神通とアキツグさんを思い出した。神通が生きていれば、この二組のように、今も仲睦まじく幸せな毎日を過ごしていたのかも知れない……私のせいではないというのは分かっている。でも私は、提督が隼鷹に怒られて嬉しそうに悲鳴を上げる姿を見るたび……球磨とハルが楽しそうに口喧嘩をしているのを見るたびに、神通とアキツグさんの幸せそうな笑顔を思い出さずにはいられなかった。
今、私の大好きな仲間たちの命運が、私の頑張りにかかっている。確かに私は今、たくさんの深海棲艦に追い立てられ、周囲を包囲されている。恐らくは、目視出来る数以上の艦隊に囲まれていることだろう。
ならば少しでも早く、私は鎮守府にたどり着かなければならない。あの時のようなことは……神通を失い、アキツグさんから笑顔を永遠に奪ってしまった失敗はもうイヤだ。繰り返さない。絶対にたどり着く。この事実を鎮守府のみんなに伝える。私が鎮守府のみんなを守る。笑顔を守り通す。
――姉さん……様子がおかしい
神通が私の耳元でそう言い、警戒を促した。確かに周囲を敵に包囲されていることは雰囲気でつかめているが、私と距離を取り、一向に攻撃してこないことに対して、私は疑問を抱いていた。
――周囲の警戒を怠っちゃダメだからね!
分かってる。でも何よりも、少しでも早く鎮守府に戻らないと……ジャミングが一向に解けないことから考えても、きっとまだ包囲されている可能性が高い……
不意に、出処不明の魚雷が前方から迫ってきた。冷静に魚雷の隙間を縫って回避する。
――左右からも来てるよッ!
減速し、左右の魚雷をや
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