番外編 〜最期〜
私が守っていたもの
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機を撃墜した。
――重巡が進行方向を塞いでるよ!!
大丈夫。私は肩と太ももの探照灯を同時に点灯して進行方向をふさぐ重巡リ級を照らした。目を潰されたリ級は取り乱し、その隙をついて単装砲を乱れ打った。リ級の撃沈を確認。
――姉さん足元!
主機をフル稼働させ、私は空高くジャンプする。と同時に私が立っていた海面に水柱が立った。
「雷撃? でもどこから……」
着水して周囲を見回す。目立った敵はいない。いるのは少し離れた位置にいるヲ級と、その周囲にいる駆逐艦たち……距離的に少しおかしい気もするが、今の攻撃はあいつらの雷撃だったのだろうか……。
「まぁいっか。……行くよ!!」
再度、主機の回転を限界まで引き上げ、私は鎮守府に向かう。さっきの一瞬の交戦の後、敵が手を出すことはなくなったが、手を出してこないというのならそれは好都合だ。今の内にめいっぱい距離を稼がせてもらう。
鎮守府の中でも最強と言われていた妹の神通は生前、ハルの前任者にあたる美容師のアキツグさんと、恋に落ちた。
『アキツグさんと、正式に……お付き合いすることになりました……』
『え?! そうなの?! よかったじゃん神通!! 二人とも仲良かったもんね!!』
『那珂ちゃんは……羨ましいけど……アイドルに恋愛はご法度なんだよっ』
『それはあんたの都合でしょ……でも、アキツグさんが私の兄さんになるのかー……』
『いや姉さん……姉さんから見たら弟になるんじゃ……』
『あそっか……あ! てことは、神通!』
『アキツグさんと結婚するつもりだね?!』
『え……いや……あの……プロポーズ……されました……』
那珂と共に、幸せそうな神通の姿を見ることが楽しく、また相手のアキツグさんも、とても私たちによくしてくれた。あのまま妹は、幸せになってくれるものだとばかり思っていた。
ある日、神通は轟沈した。侵攻してきた屈強な敵艦隊を食い止める作戦で、私と那珂の目の前で轟沈していった。
鎮守府に戻った私達を、アキツグさんは激しくなじった。
――なんでお前らが生きてて神通が沈んでるんだよ!
神通助けてこいよ!! 早く行けよッ!!!
あの時の彼を責めるつもりはない。誰しも最愛の人を理不尽に奪われれば、誰かにその責任を取らせないと心のバランスを保つことは難しい。アキツグさんはあの時、私と那珂をなじらなければ、きっと壊れていた。だから私たちは、アキツグさんを悪く思うことはなかった。
神通を失ったアキツグさんは、やがて鎮守府での居場所がなくなったと錯覚し、完全にやる気を失って鎮守府を出て行った。『川内、那珂ちゃん……あの時は酷いことを言ってごめん。……でも、来なければよかった。こんなに辛い思いをすると分かっていたら、
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