番外編 〜最期〜
閉じた門
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敵駆逐艦の甘い砲撃をかわし、私は反撃を行った。その直撃を受けた敵は大破炎上し、そのまま轟沈。これで20体目の深海棲艦を沈めたが、敵の数は一向に減る気配がなかった。
今晩の哨戒任務の担当は私と川内の二人だった。二人で哨戒任務に出て、いつもと変わらないルートで哨戒をこなしていく私達。規定の時間に近づき、そろそろ帰投しようかと彼女と話をしていた最中、私達は鎮守府に迫る敵艦隊を多数の敵艦隊と遭遇した。
「ちょっと……ヤバいよビス子……無線が通じない……」
「ジャミングでもされてるのかしら……ならば直接鎮守府に戻って伝えるしかないようね……」
私たちは、すでに上空の観測機に補足されている。いつ観測射撃が行われてもおかしくない。しかしあの観測機は、見覚えがある気がする……。
上空で旋回する観測機のあの動きと見た目……喉まで出かかっているが思い出せないこの違和感は、一隻の敵戦艦の姿を確認したときに鮮明に思い出した。
「あのタ級……!!」
その姿を見た瞬間、私の全身の毛が逆立ち、肌が粟立ち、血液が逆流したことを感じた。私の大切な親友、アカツキを轟沈にまで追い込んだ張本人のタ級だった。
「センダイ。あなたは鎮守府に戻ってこのことを伝えて」
「え……でもビス子はどうするの?」
「……私はできるだけ時間を稼ぐわ」
センダイに言い放ったこの言葉は、半分は本当だ。二人で鎮守府に戻るより、一人はここで足止めをしたほうがいい。そしてその役目は軽巡洋艦のセンダイよりも、戦艦である私の方がふさわしいだろう。
だがそれ以上に、私は利己的な理由でこの場に残ることを決めた。
あの日、私は轟沈していくアカツキを、ただ泣きながら見守ることしか出来なかった。その様子を、恐らくはほくそ笑みながら高慢に眺め、やがて背を向けて去っていった忌々しいタ級……私はあの日、自分自身にある誓いを立てた。そしてつい最近、それを球磨とハルに言い放ってしまったばかりだった。
―― アカツキの仇は取るわよ キチンとね
「ありがとうビス子。絶対に鎮守府にたどり着く。だからビス子、沈まないでね」
「私はあなたよりも夜戦が得意なのよセンダイ?」
「そうだったね……なら心配ないか!」
「そうよ。それに私は、アカツキと合わせて一人前のレディーなんだから」
「分かった!」
「だからあなたも、絶対に沈んだらダメよ。必ず鎮守府にたどり着くのよ」
「分かってる! じゃあねビス子! またあとで!!」
「ええ。またあとでね!!」
私はウソをついた。恐らく私は、この戦いで沈むだろう。このことを知った時、センダイは怒るだろうか……ウソをついた私に、『またあとでって言ったじゃん!!』と怒ってくれるだろうか……大好きな鎮守府の仲間たちは、私が
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