番外編 〜最期〜
閉じた門
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なかった。タ級は私の元まで来て立ち止まり、一層凶悪な笑みを浮かべた。
両膝をついた体勢で海面に立っている私だが、すでに私は沈没が始まっている。私の下半身の半分が海に呑まれた状態だったが、タ級は私の頭を掴み、無理矢理に海から引きずりだした。
――ビス子!!
そのままタ級は、自身の砲塔を私の眉間に密着させた。その顔をニタッと歪ませ、砲塔から徹甲弾を装填した音が聞こえた。
この瞬間を、私は待っていた。
「Jetzt!!!」
タ級の砲塔が火を拭くその直前、私はタ級の砲塔に強烈な掌打を当て、砲塔を右にずらした。その瞬間砲塔から徹甲弾が発射されたが、それは衝撃で私の右耳の鼓膜を破っただけで、砲弾そのものは海中に消えた。
隠し持っていた三式弾を、動揺してうろたえているタ級の口に無理矢理に捻り込む。
「言ったでしょ……あなただけは絶対に沈める!」
タ級の口から飛び出た三式弾を、喉の奥に押しこむように右拳で殴りこむ。その直後三式弾が発火し、タ級を爆散させた。
――ビス子! ビス子!!
すでに上半身まで沈み始めた私の元にアカツキが駆けつけ、私の身体を必死に支えようとしていた。
――止まって! ビス子ダメ!! 一人前のレディーなんでしょ?!
……あの時と立場が逆ね……今度は私が沈む番だわ……あなたの隣に行くわね。
――ダメ! 暁はまだビス子と会いたくないんだから!!
球磨との約束を守らなきゃダメ!! 帰らなきゃダメ!!
ごめんなさいアカツキ……私は一人前のレディーではなかったみたい……クマ……無茶をするなというあなたの忠告……聞かなくてごめんなさい……でも後悔はないわ……
「……ドライマイスター……全然食べきれてないわね……」
ハルからもらったドライマイスターのチョコをほとんど残したまま沈む形になってしまったことを思い出し、ハルへの罪悪感が少し芽生えた。こういったところが半人前のレディーとでも言うべきなのかしら……すでに首まで沈んだ私はそんなことを思い、やがて全身が沈んでいった。
――ビス子……
ごめんなさいアカツキ。……でも私はうれしいわよ? あなたの仇を取れたし、足止めも出来た。後悔はない。
それにね。私はあなたに会いたかった。会って、この帽子を返したかったわ。
――私は、ずっとあなたと一緒にいたのよ? それに、その帽子はあなたに上げたのよ?
分かってた。分かってたわアカツキ。……でも私は、あなたの声が聞きたかったの。あの楽しかった日々のようにあなたの姿を追いかけて、あなたの隣に立ちたかった。だから私は後悔はない。ドライマイスターのチョコを食べきれなかったことは残念だったけど……
……センダイはちゃんと鎮守
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