番外編 〜最期〜
帽子
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だろう。鎮守府に戻ったら、司令官にいっぱい褒めてもらった後、加古と古鷹のお気に入りのあの場所でお昼寝でもしようか。そんなことを考えながら、私はお天道様を眺めていた。
「……あれ?」
異変を感じた私は、眩しいのをこらえてお天道様をよく見た。お天道様の眩しさに紛れて、黒い点が一つ見えた。その黒い点は、空中でゆっくりと円を描いている。
「……? なにかしら?」
足を止めることなく、上空の黒い点を観察する。お天道様の眩しさに紛れているので今一分かりづらい……見間違いか気のせいかもしれない……まぶしすぎて黒い点が見えているだけなのかも……
「……?!」
私があの上空の黒い点の正体に目星がついたのと、私の頭に徹甲弾が直撃したのは同時だった。私はその勢いで大きく背後に吹き飛ばされてしまい、ドラム缶から手を離してしまった。
「いたた……帽子?! 響の帽子は?!」
自身の頭に響の形見の帽子がないことに気付いて、私は慌てて周囲を探した。響の帽子は私から少し離れたところに落ちていた。今にも海中に沈んでしまいそうだったが、既の所で回収できた。幸いなことに、徹甲弾による傷は見当たらなかった。
安心したのもつかの間、第二撃の徹甲弾が再び私の眉間に直撃した。再び背後に吹き飛ばされた私は周囲を見るが、敵らしき姿は見えない。ここからは見えないほど遠くにいる敵からの砲撃……ということは、相手は戦艦クラスの深海棲艦だろうか。ここまで正確無比な砲撃をしてくるあたり、やはり頭上でくるくると円を描いている黒い点は深海棲艦の観測機で、観測射撃を行っているに違いない。
――暁、体勢を立てなおして
聞き覚えのある声が耳元で聞こえ、私は脳震盪でグラグラする頭を抱えながら立ち上がった。主機の出力を上げてその場からすばやく離れた時、私がいた場所に第三撃の徹甲弾が着弾した。あのまま呆けていたら、私は確実に轟沈していた。
響の帽子をかぶり直し、私は前方を睨んだ。小島の陰に隠れていたのだろうか。周囲には駆逐艦と軽巡洋艦が合わせて4体、私を囲むように陣形を組んでいた。敵艦隊の砲塔が、こちらに狙いをつけているのが分かる。
――背後にも気をつけるのよ暁!
分かってるわよ雷。私だって艦娘だし、何より一人前のレディー。こう見えて戦闘経験も豊富なんだから。
主機の出力を最大まで上げ、私は全速力でその場を離れた。駆逐艦の私は、スピードなら誰にも負けない。たとえ頭上から観測されていたとしても、私のスピードなら偏差射撃は難しいはずだ。距離を詰めている駆逐艦や巡洋艦も、私のスピードに照準を合わせることは難しいはず。逃げに徹すればなんとかなる。
――暁ちゃん 右から魚雷が来ているのです
電の声が聞こえ、右から接近している
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