巻ノ三十三 追撃その七
[8]前話 [2]次話
「兵達も思う存分戦うわ」
「ですな、確かに」
「そこまで篤く遇してもらえるならば」
「それも徳川家の強さの秘密」
「そういうことですな」
「流石に骸まで持って行くのは無理だったにしろ」
見れば城の中に黄色の具足を着た亡骸が多く転がっている、言うまでもなく徳川の兵達だ。
「それでもな」
「生きている者は置いておかぬ」
「何があろうと連れて行く」
「それが徳川家ですな」
「あの家の戦ですな」
「そういうことじゃな、やはり徳川家はよい家じゃ」
敵であるがだ、幸村はそのことを素直に認めていた。
「天下から敬愛を受けるのも道理じゃ」
「ですな、まことに」
「一目置かれるには理由がある」
「左様ですな」
「そうじゃ、そしてじゃ」
幸村はさらに言った。
「我等はこれよりな」
「うむ、先程父上の下から人が来て伝えてきた」
信之が幸村のところに来て言って来た。
「我等はこれよりじゃ」
「逃げる敵をですな」
「うむ、攻めよとのことじゃ」
「そうですな、そして攻めるにあたって」
幸村は戦のこれからの流れを読みつつ信之に話した。
「父上も」
「そうじゃ、父上ご自身が軍勢を率いられてな」
「敵を攻めるのですな」
「そうされるとのことじゃ」
「そして我等も」
「攻め手に加われとのことじゃ」
「わかり申した、ではな」
幸村は兄の言葉をここまで聞いてだ、そのうえで。
己の家臣達に顔を向けてだ、こう告げた。
「勿論御主達もじゃ」
「はい、次の攻めにもですな」
「我等も加わり」
「そのうえで」
「思う存分戦え」
こう告げるのだった。
「よいな」
「承知しました」
「では思う存分戦います」
「そしてそのうえで」
「敵を上田から追い出すのですな」
「また腕の見せどころじゃ」
こうもだ、幸村は彼等に告げた。
「手柄を立てよ」
「喜んでそうさせてもいます」
「是非共」
「その様にな、では追う用意をしてな」
そのうえでとだ、幸村は家臣達にこうも話した。
「父上のお言葉があれば城を出るぞ」
「はい」
十人は幸村に一度に答えた、そしてだった。
真田の軍勢は今は追わずだった、そのうえで。
追う用意をしていた、昌幸は軍勢をまとめ留守役も決めてから自ら馬に乗り兜も被り大手門に向かった。
真田家が攻める用意をしている間徳川家の軍勢は急いで上田から出ようとしていた、鳥居は自ら兵を叱咤激励していた。
「急げ、さもないとじゃ」
「はい、敵が来ますな」
「後ろから」
兵達も応える、それも決死の顔で。
「だからこそですな」
「ここは急いで上田から出る
「そうされるのですな」
「そうじゃ、だから急ぐのじゃ」
鳥居はこう兵達に返した。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ