第二十二話 アントワッペン市街戦・前編
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走した市民は皆殺しにされ、メイジの放ったフレイム・ボールが次々と家屋やバリケードを燃やし破壊した。
「……」
「……」
この一方的な光景に屋根裏部屋には沈黙が落ちた。
「やはり、メイジに勝つのは無理だ」
ポツリと誰かがつぶやいた。
この言葉が次々と伝染して行き見る見るうちに士気が下がっていく。
「みんな、戦いは始まったばかりだ。それに、あのヘルヴェティア傭兵の陣形に、何の備えも無く情熱のまま突っ込んだ彼らはハッキリ言えば愚かだ! だが、私は違う、あの陣形を破る方法を知っている、諦める前に私に指示に従って欲しい」
ラザールの鼓舞で辛うじて崩壊は回避した。
「で、あの陣形を破る方法とは?」
「大して難しい事じゃない。あの広場だからこそあの陣形を張る事ができたんだ、陣形を張る事ができない路地裏に誘い込む。つまりは作戦の第三段階に移行するように各部署に通達を、バリケードは誘引用意外は放棄を」
ラザールの言葉に活気を取り戻すと、市民達は伝達のために各部署へ散って行った。
まだ戦いは始まったばかりだ。
☆ ☆ ☆
ド・フランドール伯の屋敷から脱出した、貴族達を積んだ荷馬車は降り注ぐロケット弾を、避けるように進路を取り無事に安全圏に退避した。
「皆様、大変ご苦労様でした」
応対したド・ブラン夫人はユーモラスに一人一人に声を掛けた。
気位の高い貴族の逆鱗に触れないように言葉を選ぶ。
「皆様の杖も取り戻しておきました……」
奪われた杖を返した。
「まったく、あの不届き者ども……どうしてくれようか。後で首を切ってくれよう」
「それよりも、早くお風呂に入りたいわ」
「そうだな、なにかワインに合うものを食べたいな」
死の危険から遠ざかった事で、好き勝手な事を言い始めた。
一人の少女を除いては……
「ちょっと! ちょっと待ってよ!」
少女が貴族達に言い寄った。
「今、マクシミリアン殿下を助ける為に民衆が命を賭けて戦っているのよ! それなら、貴族である私達も彼らに協力すべきよ!」
声を荒げた少女は、マクシミリアンに命を助けられた少女ミシェルだった。
「この娘は何を言っているんだ?」
「この者はマクシミリアン殿下にお声を掛けられた少女では?」
「まあまあ、彼女はマクシミリアン殿下に直接お声を掛けて頂いた事で舞い上がっているのでしょう」
「若い者は、何かと新し物好きですから。殿下のあのような言葉を本気にしてしまったのでは?」
「まったく、殿下にも困ったものだ」
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