原作開始前
EP.5 幼き想い
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なる。魔導士としての彼は遠いところにいるけど、絶対に諦めるものか、と。
「しかし……お、想い人、か」
ポーリュシカに指摘された単語を反芻する。
恋愛感情なるものは、エルザにはよく分からない。楽園の塔でジェラールに抱いていた感情だって、正義感の強い彼への憧れはあったが、それが恋なのかと聞かれてもその是非を答えられないのだ。
こそばゆいというか小っ恥ずかしいというか……恋というものに対して、エルザはそんな感覚だった。
「(時間が経てば自然と分かるのだろうか……)」
ワタルの事を『好き』か『嫌い』なら『好き』と答えられる。それがlikeかloveなのかは分からないが。
その断定もしたくなかった。もし違った時、ワタルとどう向き合えばいいのか皆目見当がつかなかったから。
「(それとも私くらいの歳なら分かるのが普通なのだろうか……)」
捨てられたのか、亡くなったのか、それさえも覚えておらず、居た記憶も無い『親』というものが居れば、教えてくれるのだろうか。
たられば言っても仕方ないとは分かっているが、両親が居て、子供狩りにも合わず、同年代の者――浮かんだのは楽園の塔で苦楽を共にした仲間やストロベリー村で過ごした面々だ――が普通に居たら、普通の少女のような話ができる友達ができたのだろうか……そんな『if』を想像してしまう。
「…………あ」
取り留めの無い雑多な思考をしていると、森を抜けてマグノリアの街に入り、最奥部の妖精の尻尾に着いてしまった。
「(考え事をしていると時間が経つのが早いな……そうだ、ワタルに礼を言わないと)」
そんな事を思いながらもエルザが中に入ると見慣れた背中……ワタルの姿を見つける。
その瞬間、先ほどまでの纏まりの無い考えがエルザの頭の中をグルグルと回り始める。
何か話しかけようとするも、その声は音にならず、ただ立ち尽くしてしまう。
「ああ、エルザ。目、治ったんだな」
そんなエルザに気付いたワタルは彼女より先に話し掛けた。
左のギプスはそのままだが、右手の包帯は取れており、こちらに手を振っている。
その顔には喜色に染まっていて――。
「見ないと思ったら……」
「その目、ポーリュシカのばーさんのところにいたのか?」
カナが心配したかのように、グレイはエルザの顔をまじまじと見ながら声を掛けるが、エルザにはぼんやりとしか聞こえていなかった。
「義眼か? へぇ、よくできてるな」
「(ああ、どうして――)」
コイツと居ると、こんなにも心が掻き乱されるのだろうか――。
= = =
右目が完治したエルザはその翌日、漸く、初仕事に出る
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