原作開始前
EP.5 幼き想い
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で、あの子、どこの子だい?」
「それが……ロブの奴に世話になっていたみたいで……」
「ロブ!? あいつ、今どこに!?」
「……死んだそうじゃ」
「…………そうか」
懐かしい名前を聞いてと驚くポーリュシカだったが、その訃報を聞くと顔を歪めたのだった。
エルザの目の治療が始まって何日か経った。
ポーリュシカは人嫌いで義眼の作成と薬の調合以外にエルザに関わろうとはせず、ワタルにすら完全に心を開いていないエルザにしても周りを拒絶するかのように塞ぎこんでいた。
そのため、2人の間には問診以外の会話はなく、この何日かは静かなものだった。
そして、全ての治療を終えたポーリュシカがエルザの目に巻いた包帯を取ると……
「どうだい?」
「……治ってる……」
ずっと見えないままだと思っていた右目が見えるようになっていた。
エルザは暫し呆然としていたが、込み上げる物を抑えきれずに涙を流す。
二度と見えないと諦めていた右目は楽園の塔で受けた拷問――エルザのトラウマそのもの。それが再び見えるようになったとあっては堪えきれるものではなかった。
「見えているね?」
「は、はい」
義眼の感触に違和感はなく、拷問で目を潰された時の醜い傷は跡も残らず綺麗さっぱりなくなっている。視力も正常で、エルザ用に調合したポーリュシカが治癒魔導士として高い技量を持っている事を示していた。
「ならさっさと出て行きな……あたしは人間が嫌いでね。ああ、そうだ。ワタルって子がアンタの目の治癒を頼んだそうだよ。帰ったら礼を言っときな」
「ワ、ワタルが!?」
目に見えて狼狽するエルザに、ポーリュシカは彼女を連れてきたマカロフの言葉を思い出した。
「そうだ……その顔じゃ、想い人っていうのも当たりかい?」
「な、なな、なん……!?」
「落ち着きなさいな……ッ!? あんた、その目……右目だけ涙が流れていない?」
人嫌いを自称しているポーリュシカだったが、泣きながらも真っ赤になって狼狽えるエルザの様子に微笑ましいものを感じ、からかったのだが……ある事に気付き、驚きの声を上げる。
左目は正常に涙を流しているのに、右目には涙が浮かんですらいないのだ。
「そんなはずは……薬の調合は完璧だったし……」
「……いいんです。私は……もう半分の涙は流しきっちゃったから」
治療に不備は無かった。義眼に拒否反応も認められないし、しっかり見えているのはエルザを見れば明らかだ。それでも何か原因があるはずだとポーリュシカは治療の際に付けた日誌を急いで見直したが、他ならぬエルザに止められた。
赤い顔で泣きながら、しかし嬉しそうな笑顔で。
『半分の涙は流しきっちゃった』
ポー
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