原作開始前
EP.5 幼き想い
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そういうのじゃない」
ワタルは面倒そうなのに目を付けられたと内心溜息を吐きながら、食事を終えて役目を果たした式神を魔符に戻し、若干煩わしげにあしらうのだった。
= = =
ワタルがカナの追及を躱しているその頃、当のエルザはマカロフと共にマグノリアの東の森にある妖精の尻尾の顧問薬剤師、ポーリュシカを訪ねていた。
人間嫌いの彼女はマカロフの古い知り合いで、魔法薬の調合を専門とした腕利きの治癒魔導士だ。
「……これまた酷い傷だねぇ」
「もう一度見えるようにはならんか?」
「問題ないよ。応急処置がされてなかったら難しいところだったが」
「そりゃあよかった。せっかく綺麗な顔をしておるのに不憫でのう……」
拷問によって潰されたエルザの右目はワタルによって摘出され、傷口に雑菌が入らないように処置されていた。そのおかげで眼窩の奥の視神経は生きており、容易に治療できる。
あくまで比較的容易に、だが。
マカロフ経由で渡された保存用魔水晶に保管された右目の損傷具合を見るに、雑菌が入って視神経が壊死していた可能性もあったのだから、不幸中の幸いというやつだ。
それはさておき、ポーリュシカは顔を顰めてマカロフの耳を引っ張り、エルザから離して声を潜めた。
「……ちょっと来な」
「痛い痛い!」
「大きくなったら手を出すんじゃないだろうね……」
「ととと、とんでもない! あの子には好きな奴……いや、憧れか? とにかくそういうのがおるわい。目の事もそいつに頼まれたんじゃ」
「フーン……その子の名は?」
「……ワタル、じゃ。エルザと同い年くらいの少年じゃよ」
腐れ縁の女性の剣幕にビビッて、引っ張られた耳をさすりながら個人情報を漏らしてしまうマカロフ。
この女好きの老人を白眼視していたポーリュシカだったが、その言葉を聞くと目を開いて驚いた。
「応急処置もその子が? 何者なんだい?」
エルザと同い年くらいというと、まだ10歳かそこらだろうか。
そんな少年が、殆ど潰されていた右目を的確に応急処置したというのだからポーリュシカの驚愕は推して知るべしだろう。
「……星族の末裔じゃ」
「星族? 生き残りがいたのかい?」
「そうらしいの」
「らしい、ってあんた……」
「心配ない」
眉を顰めたポーリュシカの言葉に、マカロフは胸を張って何の問題もないと言い切った。
型破りで女好きで80になっても無茶を止めない馬鹿だが、本質を見抜く目は確かだ。それに言っても聞くような男でもないと、十分すぎるほど知っている。
ポーリュシカは鼻を鳴らすとエルザに視線を遣って口を開いた。
「フン……
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