原作開始前
EP.5 幼き想い
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
タルがその旨を言えば、式神はスプーンを小脇に抱えると片手を腰について胸を反らした。
「へぇ……例えば何ができるの?」
「こいつに興味があるのか?」
表情どころか顔も無いがどこか愛嬌を感じさせる動きに感心したのか、カナは指で式神の頭を小突きながらワタルに尋ねた。聞けば、自分の魔法である魔法の札と関連性があるかも、と思ったとの事。
仕事道具であるタロットカードを見せながらのカナの言葉に少し考えると、ワタルは口を開いた。
「あんまり関係ないと思うぞ。式神は魔法というより契約に近いし」
「契約?」
「そう。血を与える代わりに術者の命に従う存在となる――それが式神だ」
「血、って……」
血で主を刻み、術式で用途を指定し、術者の魔力で発動する――これが式神の大まかな概要だ。
純粋な好奇心で聞いた答えが『血』に『契約』というあまり穏やかではない言葉だったためか、カナは絶句している。
「じゃあ、命があるって事か?」
グレイの問いはもちろん否だ。魔術において命を創り出す事は禁忌中の禁忌であり、それを侵した者は永遠の責め苦を受ける、とされている。
式神はただ命令に従うためだけの存在。血はあくまで主人との契約に使う媒介であり、魔力で動く人形に過ぎない。
「――といっても、さっきも言ったが元が紙だから大した事は出来ないし、契約に使う血だって一滴だけ、俺の情報を与えるだけだから、そんな物騒な話でもないさ」
改良しだいでは戦闘にも使える式神を生み出す事は可能なのかはワタルには分からない。だが仮に可能だとしても、ワタルはそれをするつもりは無いし、それを公表するつもりも無い。
碌な使われ方がされないのが目に見えているのも理由の一つだが、ワタル自身がそういった戦法を好まないからだ。
端的に言えば、殴らせるのではなく殴る方が好きなのだ。
殺し合いは嫌いだが、殴り合いは好きなのだ。
式神で戦わせることとの違いは説明が難しいのだが、そこには微妙な違いがある。
良く言えばまっすぐ、悪く言えば脳筋的な思考である事は重々承知だが、ワタルからすれば譲れない一線なのだ。
「……そういえばエルザは? 朝から見てないけど、ワタルは知ってる?」
そんなワタルの胸の内の考えは置いといて、興味が失せたのか、カナは話題を変えた。
「なんか、昨日マスターに呼ばれたって言ってたな」
「ふーん……仲良いの?」
模擬戦の後にマカロフに声を掛けられたエルザの事を思い出したワタルがそれを言えば、カナは目に好奇の光を宿らせて尋ねてくる。大人と同じように魔導士として働いているが、年頃の少女である事に変わりはなく、興味を持つのは別に不思議な事ではない。
「……一ヶ月の付き合いだ。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ