第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
4話 燻る苦悩
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
門番の守護していた階段の先、暗がりの袋小路にいた男の求めていたモノが眠る場所は、煩わしい通路の分岐も罠もなく、ただひたすらに直進するだけの通路のみのダンジョン《剣の櫃堂》は発光する苔の幽かな灯りを途切れ途切れに道標として、その先も奥へ単調に延びる様を暗に伝える。
しかし、門番と同様に内部にも駆動する石像は配備されており、道の両脇に沿って並び立つそれ全てでないにしても相当数が石で造られた武器を振りかざして襲ってくるのである。しかしながら、内部の石像は数こそ多いのだが、門番と比べるとレベルの面では劣るものがある。門番でさえ、体術スキルにして僅か五発。片手剣による攻撃を含めると六発で決着のつく程度だ。故に、ダンジョンに入ってからは苦戦らしい苦戦もなく、現在に至る。
「ゼァァ!」
踏み込みから繰り出す正拳と、そこから転身しての裏拳。体術スキル二連技《旋桜》が鳩尾を穿ち、脇腹を砕き、石の身体は両断される。青い燐光となって消滅する石像を見送り、無機質な守護者の群れは一先ず払い除けたといったところか。一息つくには丁度良い頃合いだ。倒壊している石像に腰を下ろして休憩を決め込む事にした。
「なんだろう、私、最前線の片手剣プレイヤーの動きを見てみたかったのに……」
「相性を見て武器を切り替える思い切りも大事だと思うぞ。蹴り技さえ使えれば盾を持ったままだって体術スキルを使いこなせるさ。そっちを重点的に鍛えれば面白いかもな………人気はないけどさ」
「……でも、隙がないのよね。面白そうだわ」
少々口惜しそうにしていたものの、冗談半分で体術スキルを勧めてみたら意外にも乗り気である。
実際、使用スキルを足技だけに限定していれば盾持ち剣士でも装備を損なわずに併用可能だ。それでもそのスタイルがあまり前線で見ないのは、やはり情報自体が出回らなかったことと低火力という難点がネックなのだろう。そもそも、フロアボスのように膨大なHPを擁するモンスターに対してはほぼ無力に等しいからこそ、見向きもされないというのが現状と言わざるを得ない。攻略は大型モンスターと戦うことだけを指すものではないのだが、それもまた大局の優先順位によるものか。
「……でも、スレイド君は盾を持ってないのよね? 装備も防具っていうより服だし、危なくないの?」
未だ日の目を浴びない体術スキルを憂うのも束の間、グリセルダさんの疑問が俺に向けられる。
セオリーに誠実なグリセルダさんだからこその問いかけは、しかしデスゲームだからこそ意味合いは重くなる。ステータスの比率やスキル構成、装備の選択は単なる個性ではない。そのプレイヤーが生き残るために導き出した答えとも言える。だからこそグリセルダさんは多くのプレイヤーが至った共通解となるビルドを選択した
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ