Side Story
少女怪盗と仮面の神父 4
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
ーデル所属の国境警備隊がうろうろしてるせいで、一歩間違えれば不法侵入者扱いだ。
そんなに領土を主張したいなら、木に網を吊るすなりしといて欲しい。
境界をわざとあやふやにして、迷い込んだ人間の身代金だの保釈金だのを狙ってるんじゃないの? 迷惑な!
……と、思ったが。
それを言うと、アルスエルナ側も地図上の境界線に合意しているだけだ。
結局、現地にはほとんど手を打ってない。
どっちもどっちか。
いや。
村付近に警備隊すら置いてないアルスエルナは、自衛の面で弛すぎる。
国端にこそ重要な政治線を引くべきであろうに、地方依存も甚だしい。
税収分働き手を上手に使える領主が在任していれば問題ないのだろうが、残念ながら、お貴族様方の大変優秀なおつむは自身の懐を温める方向にしか働いてない。
でなければ、南方領民が財政難に頭を悩ませる必要も怪盗シャムロックが暗躍する必要もなかったのだから。
まあ、だらしないとも思える薄政ぶりのおかげでバーデルの浮浪者だったミートリッテが、アルスエルナの領土内でハウィスに拾われたのだけど。
彼の国、出るは易し、入るは難しである。
本当にこんなスカスカ状態で大丈夫なのか、アルスエルナ王国。
そのうち、バーデルに侵攻されるぞ?
実際に海賊が来ちゃってるし。
先行きに不安しかないってのは、国としてどうなんだ。
「とにかく、国境線だけは越えないようにしなきゃ。はぁあ〜〜……もう、しんどいよぉお〜〜……」
ここでも微妙な匙加減を求められ。
シャムロックは、容赦ない鈍痛を訴える自らの頭を抱えた。
が。
「……へいき。わたしは、へいき。だいじょうぶ。だって、うごけるもの。
ても、あしも、あたまも、ゆびさきも。ぜんぶぜんぶ、うごくもの。
だったら、うごけ。うごかせ。
わたしはいきてる。
なんのしょうがいもないなら、うごけるかぎり、うごきつづけるの。
うごけなくなるまで、なにもあきらめたりしない。
そうよ……私は、ハウィス達の為なら何だってするって決めたんだから。この程度で投げ出してたまるもんか!」
(そうでしょう? ミートリッテ)
直立不動のまま、焦点が定まらない視線を空へと放り。
両腕をだらりと垂らして、潮風をやり過ごす。
ふと、小さな白い鳥がぼやけた視界の端を掠めて飛んでいった。
どこへ向かうのだろう?
その先で美味しいご飯が食べられると良いね、と微笑み。
ミートリッテは、砂に残る自分の足跡を遡った。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ