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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 4
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心地好い。
 白砂の上をなぞる透明な海水が、足下から離れるほど青さを深めるのも、実に神秘的で興味深い。

 なにより、両親が眠っている場所だ。
 海岸に来ると会える気がする、とか、そんな感傷に浸るつもりはないが、一緒に過ごした時間を思い返して笑ったり拗ねたり、くすぐったくはなる。
 崖から海に飛び込みたいという衝動も。
 もしかしたら、根っこには両親への執着があったのかも知れない。
 最後に甘えられたのは何歳の時だったか。
 記憶の中で抱きしめる両親の顔はいつも、土気色をした無表情だ。

 温かい海水に抱かれれば、何かが変わるだろうか?
 そんな、泡よりも儚い期待は

「……空しい……」

 見事、()()()()()蹴散らされたのだが。

「うぅぅー……目立った障害物は無いのになあ。あっちの崖は深いくせに、なんでなのさーっ!」

 見上げる崖の高さは、二階建ての家屋三戸分を縦に積んだ程度、以上。
 海に突き出した先端の下方は浸水しているものの。
 少し離れた砂浜から地面が透けて見える深さしかない。
 目測では、一番深くてもミートリッテの腰上くらいか。

 こんな条件で『崖ドボーン』を実行したら、結果は多分『崖グシャ』。
 それでは何も面白くないし、本気で村の人達に大迷惑な、ただの自殺だ。
 ミートリッテは、あくまでも()()()()()()()()()のであって。
 決して、()()()()()()()()()()()わけではない。

 よって、ネアウィック村での『崖ドボーン』は諦めざるを得なくなった。
 おまけに、海賊の依頼で使える逃走経路も、一つ姿を消したことになる。
 せっかく見つけた楽しみが失われ、またしても気分が落ちてしまった。

「ままならぬものね」

 はふぅ……と深いため息を吐き。
 さてどうしたものかと、思考をシャムロックのものへと切り替える。

 南側が塞がれたとなれば、侵入と逃走に使える道は北側の坂一本のみ。
 人目を避ける為、一旦村を出て、西の山から坂道に繋がる地点まで登り、帰りはその逆を辿るしかなさそうだ。
 教会の敷地を出入りするのは、深夜と早朝の間。
 アーレスト神父が眠っている頃。
 入口の扉に付けられた鍵は、針金で簡単に開ける型だった。
 少なくとも侵入には手間取らないだろう。
 肝心な礼拝堂内での動きは、暗闇の感覚次第。

 となれば、次は西の山を探ろうか。
 果樹園よりもっと遠くに、使える足場があれば良いのだが、あの辺りには十分気を付けないと、判りやすい境界線を敷いてないわりにバ
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