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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 4
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て他にもたくさんあるのに! 長く険しく疲れる道をわざわざ時間を掛けて登ったと思ったら、何故か落ちるんだよ!? 下りるんじゃなくて、落ちるの! いったい其処に何があるのかって、気になるでしょ普通。そしたら、生きてる間に一回は落ちてみたくなるじゃない? 面白そうだもの! ね? アルフィンも興味が湧いてきたでしょ!?」
 「ううん。全然。」
 「くッ! 切れ味優れた無関心さが胸に痛いわ……っ」
 力説? から一転、頭と肩がガクリと落ちる。
 劇話でよく使われる舞台の割りに崖に対する周囲の反応は薄く、ミートリッテの「崖ドボーン」熱は空回りするばかりだった。
 「私には解らないけど、いつかミー姉と好きなものが一緒な人に会えると良いね。一人ぼっちは寂しいもん」
 イルカを潰すほど腕に力を込めたアルフィンは、再び海に向き直って沖をじっと見つめだす。
 「……早く帰って来たら嬉しいね、グレンデルさん」
 「うん」
 母親を早くに亡くし、漁師の父親は一ヶ月以上帰って来ない場合もある。一人暮らしも手慣れたしっかり者のアルフィンだが、やはりこうした横顔を見ると切ないものを感じてしまう。
 ミートリッテが両親を亡くした年頃に近いから……だろうか。
 「じゃ、私は崖を見に行くわ。風に当たり過ぎちゃ駄目よ?」
 つやつやでさらさらな髪をわしゃっと撫でて、目的地へと足を運ぶ。斜め後ろから聞こえた「ミー姉も気を付けてね」の言葉に、「はーい」と声だけで答えた。



 海は好きだ。
 緩やかな曲線を描く空と海の境を眺めていると、その先に未知の世界が広がってる気がしてわくわくするし、低く響く波音は子守唄のようで落ち着く。
 強すぎる風は吹き飛ばされそうでちょっと怖いけど、髪が揺れる程度なら心地好い。白い砂の上をなぞる透明な海水が、足下から離れるほど青さを深めるのも神秘的で興味深い。
 なにより、両親が眠っている場所だ。
 海岸(ここ)に来ると会える気がする……とか感傷に浸るつもりはさらさら無いが、一緒に過ごした時間を思い返して笑ったり拗ねたり、ちょっとばかり擽ったくはなる。
 飛び込みたい衝動も、もしかしたら根っこには両親への執着があったのかも知れない。
 最後に甘えられたのは何歳の時だったか……記憶の中で抱き締める両親の顔はいつも、土気色をした無表情だ。
 温かい海水に抱かれれば何かが変わるだろうか?
 そんな泡よりも儚い期待は
 「……空しい……」
 遠浅の海に見事蹴散らされたのだが。
 「うぅぅー……目立った障害物は無いのになぁ……。あっちの崖は深いくせに、なんでなのさーっ!」
 見上げる崖の高さは二階建て家屋三戸分相当どころではなく。海に突き出した先端の下方は浸水しているものの、少し離れた砂浜から地面が透けて見える深さしかない。目
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