第2章:埋もれし過去の産物
第35話「狂気に堕ちし緋き雪」
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―――シュネー!
―――ぅあ....ムート...?
―――っ、これは....シュネー、城に来て。
そう言って“私”は“彼”に連れられて城へと案内された。
「(...なんだろう、安心する...。)」
“彼”の握る手が、とても安心できた。
まるで、私がお兄ちゃんに慰められた時とかみたいに。
―――...ねぇ、ムート。
―――なんだ?シュネー。
―――私...ホントにムートの傍にいていいの....?
場面はまた移り、傍にいてくれる“彼”に“私”は寄り添いながらそう尋ねた。
「(...怖い、不安、嫌だ、泣きたい、助けて....。)」
ぐちゃぐちゃと、そんな風に掻き混ぜられたような“私”の想いが、私を襲う。
本来なら私の心が乱されて、混乱するはずだけど、なぜかそれを“普通”だと捉えていた。...なんで....?
―――何言ってるんだ。当然、いてもいいに決まってるじゃないか。
―――....でも、私、吸血鬼になってしまったし...。
「(吸血鬼...!?)」
それは、今の私の種族と同じ。
そういえば、“私”の背中には羽の感触がある。多分、私と同じものだろう。
「(どうして...それに、この光景は....。)」
私の吸血鬼化の原因は神様に願った特典なはず。
でも、あまりにも“私”と私の共通点が多すぎて、無関係とは思えない。
―――...はい、これ。
―――これは...?
“私”は“彼”にあるものを渡される。
「(あ、これって....。)」
―――シュネーのお守り。きっと守ってくれるよ。
―――....いいの?
―――ああ。シュネーのために技術の粋を集めて作ったからね。
―――....ありがとう。
それは、蝙蝠の羽が張り付けられた赤色の十字架のネックレスだった。
「(....そっか、そういう事だったんだ。)」
私は一人、納得する。なにせ、そのネックレスは...。
―――名前はなんて言うの?
―――まだ決めてないよ。...シュネーが名づけてあげて。
―――....う〜ん...。あ、そうだ。あの日、ムートと見た夕日の色にちなんで...。
―――“あの日”か....懐かしいな。
「(あれ....?)」
“あの日”。その単語で、なぜか“彼”と城のバルコニーから夕陽を眺めている光景が、フラッシュバックした。
...それこそ、懐かしい記憶のように。
―――さぁ、名前を呼んであげて。
――
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