三十一話:理想の代償
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り捨てた弱者の姿を!」
言われたとおりに彼らの姿を見てしまう。血だまりに沈む彼らの姿を。顔など原型も留めていない。時折残った眼球がこちらを見つめてくるだけだ。急に恐ろしくなった。知らず知らずのうちに奥歯がカチカチと鳴る。
こんなものを何度も見ていかなければならないのか。こんな悲劇を自分の手で数え切れないほどに生み出していくのか。全てを救いたいという憧れを捨てなければ犠牲は増えるばかりなのか。正義の味方を目指す代償とは自分以外の誰かなのかと。
「全てを救おうとしようが、数の多い方を救おうとしようが、正義の味方を目指す以上は人間にはなれない。正義の味方なんてものは起きた出来事を効率よく片付けるだけの機械だからね」
「あ、あたしは―――」
どうすればいいのだろうか。そう口にしようとしたところで今まで封鎖されていたシールドが砕かれる。砕いたのは外に居たティアナとティアナから連絡を受け全速力で駆け付けたギンガである。因みにエリオとキャロは今まさにルーテシアとガリューと戦闘を行っているために来ることが出来なかった。
「スバルッ!!」
「スバルから離れなさいッ!」
勢いよく雪崩れ込んでくる二人にも特に動揺することなく男は襲い来る攻撃を躱し、二人から距離を取る。ティアナとギンガは呆然自失とするスバルとその周りの惨状に怒りの表情を向ける。だが、男は涼しげな表情を浮かべるだけである。
「さて、流石にこれは不利かな。僕は帰らせてもらうよ」
「そんなことをさせるとでも?」
「生憎、逃走には慣れているんでね。それと最後に言っておこうスバル・ナカジマ」
男はどこまでも澄んだ何も映していないような瞳のスバルに告げる。最終警告ともとれる言葉はその後スバルの記憶に残り続けることになる。
「理想を捨てて人間になれないのなら、せいぜい機械のまま―――理想を抱いて溺死しろ」
機械という言葉にギンガとティアナが反応した隙に男が指を鳴らす。すると仕掛けてった爆弾が爆発し天井が崩れ落ちてくる。瓦礫は男と三人を分断し巨大な壁となる。すぐにギンガが瓦礫を砕いて男の居た場所に出るがそこには既に男の姿はなかった。
これがスバルと男、切嗣の二度目の出会いであった。
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