後編
7.最後の客
[9/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ように気をつけながら耳掃除を続けた。
「……ハル?」
「んー?」
「泣いてるクマ?」
「アホ。ローションこぼしたんだよ」
両耳が終わり、ローションでキレイにしたところで終わり。最後のお客様。お疲れさまでしたー。
「クマ……」
「終わったぞー」
「クマっ」
球磨は俺の膝から身体を起こし、そのまま俺の右隣に座った。こいつはいつも、こうやって俺の隣にいてくれた。
「ハル」
「ん?」
球磨が左手で俺の右手を強く握った。その手は少しカタカタと震えているように感じた。
「ちょっとだけ……抱きついていいクマ?」
「……俺も、球磨を抱きしめていいか?」
「うん」
球磨の返事が終わる前に、球磨の身体を抱き寄せて思いっきりキツく抱きしめた。
「……痛いクマ」
「……だったら離れろよ」
「……ヤだクマ」
球磨もまた、俺の首に手を回し、おれを思いっきり抱き寄せていた。
「……いてぇ」
「だったら離してもいいクマ?」
「……ヤだ」
「わがままな床屋だクマ」
「うるせぇ」
少しだけ手の力を抜き、球磨の身体を離す。球磨も同じタイミングで力を抜き、ほんの少しだけ離れた。その後、今度は互いに顔を近づけ、唇を静かに触れ合わせた。
「ん……」
しばらくそうした後、どちらからともなく唇を離した俺達は、また力を込めて互いの身体を抱きしめる。唇の余韻はしばらく残った後、粉砂糖のようにひんやりと消えた。
「……突然なんてことしてくれるクマ」
「うるせー。お前だって受け入れた癖に」
「クマっ……」
「……球磨」
「クマ?」
「俺はお前が好きだ」
「球磨も……ハルが好きだクマ。ハルとずっと一緒にいたいクマ」
「俺もだ。……だから絶対に俺の隣に戻ってこい」
「うん。必ず戻るクマ」
「戻ったら、好きなだけ霧吹きを吹きかけろ。足の裏もかいてやる。……好きなだけキスしてやるから」
「うん」
そうしてしばらくの間、互いに相手の感触を身体に刻み込んだ後、俺達は身体を離した。長ソファから立ち上がり、俺達は手を繋いだまま、入り口のドアを開ける。ドアから離れたところには、すでに鎮守府の残りのメンバーが球磨を待っていた。
「球磨姉、散髪終わった?」
みんなの中でただ一人、入り口のそばで待っていた北上が、俺達のそばまで来た。北上は両手両足に魚雷発射管を装着していた。すでに敵艦隊が近くまで来ているのかもしれない。
「うん。終わったクマ」
球磨が俺の手を離し、俺と向かい合った。その顔には、さっきのような不安はなく、いつもの妖怪アホ毛女と変わらない笑顔があった。
「ハル、ありがとクマ。もうすぐここは大変なことになるから、ハルも早く逃げるクマよ?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ