巻ノ三十三 追撃その四
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「戦うやり方を覚えた」
「そうであるか」
「これなら御主や佐助の様に派手ではないが」
「敵に近寄って戦うこともじゃな」
「充分に出来る、ではな」
「このままじゃな」
「戦おうぞ」
二人もこう話してだ、そのうえでだった。
十人全員で二の丸の門のところに来た徳川の兵達を霧の中で倒していった。それが暫くの間続いていき。
霧が晴れた、その時に。
鳥居は周りにだ、恐ろしいものを見たのだった。
彼とその周りに集まった兵達は無事だった、だが相当な数の兵達が倒れていた。その有様を見てだった。
彼は歯噛みしてだ、こう言った。
「やられたわ」
「はい、またしてもですな」
「我等は策にかかりました」
「霧が立ち込める中で」
「徹底的にやられましたな」
「ここに送った兵のうち」
倒れている者と残っている者を見回して言う。
「四割がやられたか」
「酷くやられましたな」
「これはまた」
「うむ、これでは門を攻められぬ」
その数を減らし過ぎたせいでだ。
「退くしかない」
「では他の場所からですか」
「攻めますか」
「そうするしかない」
鳥居は苦い顔で言った、だが。
兵達が数人だ、鳥居の前に息を切らして駆け付けて言って来た。
「大変です、大手門の辺りから」
「そして我等の周りからです」
「六文銭の旗が次々と立ってきております」
「まで攻めては来ておりませぬが」
「伏兵か」
鳥居はその話を聞いてすぐに察した。
「伏兵がおったか」
「どうやら」
「それかと」
「くっ、真田家らしい」
「神算鬼謀の家といいますが」
「こうしたこともですか」
「有り得たが」
今になって思ったことをだ、鳥居は苦々しく思いながら言った。己の愚かさを思いそれでそうなったのである。
「しかしな」
「そうして来たからには」
「どうされますか」
「ここで伏兵に襲われたならば」
「我等は」
「囲まれたら終わりじゃ」
敵兵達にというのだ。
「特に城の中ではな」
「はい、逃げ場がありませぬ」
「ここで囲まれますと」
「まさにです」
「我等は全滅です」
「そうなってしまうわ」
実際にとだ、鳥居はここでも苦々しい声を出した。
「このままでは危うい」
「ではどうされますか」
「ここは」
「このままですと」
「今にも」
「こうなっては仕方ない」
先程まで以上にだった、鳥居は苦々しい声を出した。
そのうえでだ、こう言った。
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