暁 〜小説投稿サイト〜
あと三日
3部分:第三章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第三章

「それと観察日記みたいなのね」
「お裁縫は?」
「それは最後」
 苦手なのでだ。後回しにするのだった。
「最後にするから」
「最後の日に終わらせるのね」
「そう、八月三十一日にね」
 運命の日だ。学生にとって一年で最も嫌な日にだというのだ。
「やるから」
「まずはその三つなのね」
「それは今日にやるわ」
 八月三十日にだというのだ。
「だからね」
「それじゃあ頑張りなさいね」
 母はこう言いながらだ。娘にあるものを出してきた。それは。
 コーヒーとユンケルだった。その二つを差し出して言うのであった。
「これで元気出してね」
「その二つを飲んでなのね」
「そう、気合入れて頑張りなさい」
 そのカップの中のコーヒーとユンケルの瓶一本を見せながら真央に話す。
「女は体力よ」
「体力なの、女は」
「そうよ。お母さんだってね」
 自分はだ。どうかというのだ。
「お父さんを手に入れるには身体張ったんだから」
「身体張ったの」
「そうよ。まさにトライだったのよ」
 そうしたというのだ。
「それであのお父さん手に入れたのよ」
「うちのお父さんって」
 真央の父の仕事は消防署員だ。事務関係だがその体格や外見はだ。まさにアンドレ=ザ=ジャイアントなのだった。本当に二メートルを超えている。
「タックルして効くの?」
「戦車でも吹き飛ばしそうだけれどね」
「そのお父さんにタックルって」
「とにかくね。そのお父さんをゲットするのに身体張ったから」
 それでだとだ。母の話は続く。
「あんたも頑張りなさいよ」
「わかったわ。それじゃあね」
 話はいささか滅茶苦茶だったがそれでも決まりだ。そのうえでだった。
 真央はまずは家の犬、そのブリヤードを描いた。デッサンなのでスケッチブックに細かく描いていく。しかしその絵はというとだった。
 母がその絵を見てだ。こう娘に尋ねた。
「ワラビってアザラシだったの」
「何言ってるのよ、犬よ」
「絶対に違うわね」
 それを確信して言う母だった。誰がどう見てもだった。
 そのスケッチブックの犬はだ。変に細くねじれた線で描かれていて空を飛んでいてだ。しかも手足がなく首が長い。それを見てはだった。
 母にしてもだ。こう言うしかなかった。
「アマゾンにいる怪物?」
「だから違うから」
 また否定する真央だった。
「犬よ。ワラビよ」
「ワラビに見せたら怒るわよ」
 自宅の庭の犬小屋の前で寝そべっているワラビを見ながら娘に話す。今二人は家の縁側に座ってだ。そうしてワラビを見てそれぞれ話しているのだ。
「それが自分だって言ったら」
「怒るかしら」
「怒るわよ。っていうかね」
「っていうか。どうしたのよ」
「あんた絵の才能無茶苦茶ね」
 ない
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ