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恋姫†袁紹♂伝
第38話
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 騎馬が本領を発揮できるのは平地の戦だ。いくら精鋭揃いでも、虎牢関の門が閉まっていては真価を発揮できない。

「無用だ、我が軍だけで当たる」

「!?」

 何気なく放たれた一言だが、内包している意味が余りにもでか過ぎる。
 
 衝車による援護を不要と言い放った、虎牢関を突破できる力があるという事だ。
 見たところ自分達のように攻城兵器を持ち合わせているわけではない。華琳が目を丸くするのも無理は無い。

「ホホホ、用も済んだことですし帰りますよ斗詩さん! 猪々子……さん?」

 理想の上司のような言葉使いで踵を返そうとした袁紹だが、その動きを猪々子により止められた。

「猪々子、なんだそれは」

「これ? 麗覇様は縄だとすぐ抜け出しちゃうからさ〜、こんなときの為に鎖を持ってきたんだ!」

「ぶ、文ちゃん! いくらなんでもそれは――」

「我は一向にかまわんッッ!」

「もう! 何で変な所で自信満々なんですか!!」

「あ、いや言ってみたかっただけ――」

 そうこうしているうちに鎖で簀巻きにされる迷族。来た時と同じように猪々子に担がれると、観念したのか抵抗はしなかった。

「ではな華琳! 事が終わったら飲み明かそうぞ!!」

「へ? え、ええ」

 一連の出来事に流石の華琳も言葉がない。今更だがあの格好で軍中を移動する事に抵抗は無いのだろうか。
 華琳の疑問に答えるように、袁紹達は何事もなく自陣に向かって歩き出した。
 彼らの背が遠くなった頃、郭嘉が胸中を言葉にする。

「まるで嵐のような御仁ですね」

「自分が台風の目でないと気がすまない性質、昔からよ」

 私塾に居た頃からそうだ。彼は常に注目を浴びる事に、無自覚ながら執着していた。
 能力の高さや、歯に衣着せぬ物言いで袁紹についで問題児だった華琳だが。
 彼女が何かしら問題を起こしても、いつの間にか介入している袁紹に上書きされる。

「楽しみね」

 心底そう思う。

 私塾に居た頃のようにその性質が健在なら、彼は必ず自軍(曹操軍)よりも大きな偉業を成し遂げ、この地の、いや、天下中の注目を掻っ攫っていくはずだ。
 果たして、自動衝車という規格外を越える事が出来るだろうか――





「な、なんやねんこの騎馬隊は……」

 華琳の許可を得て水関を通っていく騎馬隊。それを最前列で見ていた李典の呟きは、その場に居た曹操軍全員の気持ちを代弁していた。

 この大陸の軍には分かり易い特色がある、色だ。
 曹操軍が蒼、孫策軍が赤とあるように、袁紹軍の特色は黄色だ。
 それを踏まえて李典達の目の前を横切る騎馬隊はどうだろうか、黒だ。
 漆黒の鎧を人馬共に纏っている、旗がなければ誰も袁紹軍
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