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あと三日
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第一章

                          あと三日
 まさにだ。絶対絶命の状況だった。
 自分の部屋の机の上にある山の如きそれは。全くの手つかずだった。
 彼女はそれを見て嘆息していた。そこにだ。
 部屋に母親が来てだ。こう言うのだった。
「あんたこれまで何してたの?」
「遊んでたわよ」
 こう母に返す彼女だった。顔に脂汗を垂れ流しながら。それはまさに蝦蟇の如くだった。
「それと部活」
「ソフトよね」
「ええ、正直今の今までね」
「宿題のこと忘れていたのね」
「綺麗さっぱりとね」
 こうだ。仁品真央は母に答える。
 黒髪は首まで完全に覆う長さにしていて髪と同じ色の眉を綺麗に切れ長気味にそろえている。目は大きく太いアーモンド型でありはっきりとした二重だ。顔は少し張りのある感じだ。ふくやかな雰囲気だ。鼻の形ははっきりとしていて高い。そして口は横に大きい。
 身体つきは少し丸い感じだ。しっかりとしているがウエストは細い。その彼女が上は白のタンクトップ、下は膝までの黄色のジャージ姿でだ。脂汗を流して机に座っているのだ。
 そしてその宿題の山を見ながら。後ろにいる母に言った。
「夏休みってさ」
「この夏休みね」
「長いわよね」
 誰もが知っていることをだ。あえて母に言うのだった。
「四十一日ね」
「普通に一ヶ月以上あるわよね」
「長いって思ってたのよ」
 また母に言うのだった。
「そう、長いってね」
「それで気付いたらだったのね」
「あと三日ね」
 真央は再び言った。
「三日しかないのね」
「そうよ。三日しかないのよ」
「どうしようかしら」
 今更といった感じの言葉だった。
「この状況は」
「どうしたらいいと思ってるの?」
「やるしかないわよ」
 結論は出ていた。既にだ。
「もうね。この宿題を全部ね」
「あと三日でね」
「参ったわね」
 まだ動かない。宿題を見ながら腕を組んでいる。
「三日で間に合うのかしら」
「間に合わせるしかないでしょ」 
 母の言葉は実に素っ気無い。
「それとも宿題踏み倒すつもりなの?」
「踏み倒したらね」
 どうなるか。それは真央もよくわかっていた。
「市中引き回しのうえ打ち首獄門よ」
「厳しい学校ね」
「普通に一ヶ月特別授業よ」
 どちらにしても厳しい。実は真央の通っている高校は勉強には厳しいのだ。とはいっても真央自身はかなりいい加減ではある。
「だから。何としてもね」
「やるしかないのよ」
「じゃあとりあえずはね」
「とりあえずは?」
「問題集をやっていくから」
 最初にだ。個人的に一番面倒なものを終わらせるというのだ。
「それからね」
「それから?」
「絵を描いてね」
「美術の宿題ね」
「そう
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