4部分:第四章
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第四章
マネージャーがここで言うビッグワンはだ。背番号ではなかった。
「漫画であったけれど」
「漫画ですか?」
「そうよ、藤子不二雄先生の漫画よ」
そちらだというのである。
「知らないの?」
「ええと、ドラえもんじゃなくて」
「それとは別によ。描いてたのよ」
隠された名作である。この漫画にも巨大な白鯨が出て来るのだ。
「昔ね」
「そうだったんですか」
「それ、知らないわよね」
「怪物くんとかエスパー魔美なら知ってますけれど」
しかしその作品は知らないというのである。
「そんな漫画もあったんですね」
「そうよ。とにかくね」
「あの白鯨何かあるんですか?それで」
「海の王者なのよ」
それだとだ。マネージャーは話すのだった。
「早くここから立ち去らないと大変なことになるわよ」
「鯨って船とか壊すんですか?」
「あの鯨は特別なのよ」
マネージャーはそうした小説や漫画から話している。そうした作品では白鯨はだ。船を破壊し船乗り達の恐怖の象徴となっているのだ。
「それこそ船でも何でもね」
「壊されるんですか」
「そうよ、もうシーラカンスどころじゃないわよ」
正直なところ生きる化石なぞ問題でなくなったというのだ。
「いいわね、立ち去るわよ」
「そうするんですか」
「ええ、それじゃあね」
「折角シーラカンス釣ったのに」
「そんなの早く海に返しなさいっ」
本当にだ。それどころではないというのである。
「いいわね、早くよ」
「わかりました。それじゃあ」
奈緒は残念な顔で自分が釣ったシーラカンスを海に返した。そして船は。
全速力でその場を後にした。幸いなことに白鯨は何もしてこず追っても来なかった。彼等は危ういところを逃れたのであった。
ところがだ。この時のことが放送されてだ。
奈緒の評価がだ。一変してしまったのだった。
視聴者達はだ。彼女をこう評するようになった。
「天然だよな」
「あれじゃないのか?」
「抜けてるっていうか」
「白鯨知らないのか?」
「メルヴィルの小説全然知らないんだな」
「常識だろ」
誰もが知っている、だからこそ言うことだった。
「そういえば出身校ってあれだったな」
「ああ、県内有数のあれな学校だったよな」
「じゃあやっぱりな」
「全然もの知らないんだな」
こんなことまで言われネットで書かれるようになった。しかも出身校のことは紛れもない事実だからだ。否定のしようがなかった。
「まああの漫画は古いけれどな」
「けれど。あの小説は普通知ってるだろ」
「白鯨って世界中の皆が知ってるお約束なのにな」
「それを知らないで言うか」
「本当にあれだな」
こう話をしてだった。彼女の評価が定まった。
あれだとだ。奈緒はこのこ
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