後編
6.カウントダウン
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「ああ聞こえた。『外に出ろ』って」
「クマも聞こえたクマ」
――急げ
「わかったクマ」
球磨は立ち上がり、俺の手を取って外に出ようと入り口まで向かった。おれは今まで球磨を膝枕をしていたせいもあって足が上手く動かせず、球磨の機敏な動きについていけずに足がもつれて倒れそうになった。
「おっととと」
「大丈夫クマ?」
「おう」
少し足を屈伸する。幾分感覚が戻ってきた足に安堵し、改めて球磨に手を引っ張られて外に出た。
外はすでに明るくなっていた。おかげで、街灯がなくとも周囲が見渡せる。海に目をやると、水平線が遠くまで繋がっているのが、なぜか今日に限って、とても印象的に見えた。
「外に出たけど……どうすりゃいいんだ?」
「わかんないクマ……」
俺の手を握る球磨の手に力が篭り、俺も同じく球磨の手を強く握り返す。さっきの悪夢のせいで不安感が拭えないが、手から伝わる球磨の感覚が、俺の胸の不快感を少し沈めてくれた。
――ドックだ
再びキソーの声が聞こえた。球磨に目をやると、俺と同じく、目が『聞こえた』と意思表示をしていた。
「ドックだな」
俺と球磨は手を繋いだまま、ドックへと急いだ。
ドックの前にたどり着くと扉はすでに半開きになっており、ドックには明かりが点いていた。ドックの中から提督さんの叫び声が聞こえる。球磨がドックの扉を開き、俺と共にドックに入った。
「川内! しっかりしろ川内!!」
提督さんがドックの中で、必死に叫んでいた。
「提督さん!」
提督さんの元に急いで駆けつけた俺と球磨が見たのは、提督さんに抱きかかえられた、川内の無残な姿だった。服はボロボロで、肩の那珂ちゃん探照灯は血まみれ。左腕に搭載された小さな砲塔は、そのほとんどが折れるか壊れているかしていて、ひと目で使い物にならないと判別出来る損傷。本人は頭から血を流し、右目は頭からの大量の出血でもはや開けないほどになっていた。
「川内!!」
「あ、ハル……ごめん……ショルダーライト……壊しちゃった……」
「んなもんどうだっていい!!」
「何があった? ビス子はどうした?」
「ごめん……こっちにとんでもない数の敵艦隊が迫ってる……」
「?! なんで連絡しなかった?!」
「ジャミングされてたみたいで……私もビス子も、無線が全然通じなくて……」
「ビス子はどうしたクマ?」
――あなたは鎮守府に戻ってこのことを伝えて。私は出来るだけ時間を稼ぐわ
「そう言ってビス子はあの場に残った……でも敵の数がものすごいから……多分もう……」
あのアホ……暁ちゃんの分まで生きるんじゃなかったのか妖怪国籍詐称女……! 生き抜いて自分のダンナを探すんじゃなかったのか……
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