暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
後編
5.ハッピーハロウィン!!
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オーラを振りまく人を初めて見た。あれは加古以上だ……。

「……んで、残ったのはお前だけか」
「そうクマね」
「……」
「どうしたクマ?」
「……いや」
「?」
「……提督さんのパイ、食うか」
「クマっ」

 俺は球磨と共に居住スペースに戻り、提督さんのパンプキンパイを二人で切り分け、その旨さに感動した。素朴でありながら充分な甘み……かぼちゃの風味が十二分に堪能出来るかぼちゃペーストと、それに絶妙に合うホイップクリーム……すべてが素晴らしい。

「美味しいクマ! さすが提督クマ!!」
「うまいな……うまいな球磨……ぐすっ」
「? なんで泣いてるクマ?」
「うるさい妖怪アホ毛女ぁ……ひぐっ……」

 俺はなぁ……あの秋鮭でお前が喜んでくれると思ったんだよぉ……ひぐっ……

「ひぐっ……いいから食おうぜ」
「ま、まぁいいクマ……」
「うまいなぁ……提督さんのパンプキンパイ、甘くて少ししょっぱくて、美味しいよなぁ球磨……ひぐっ……ひぐっ……」
「?? ???」

 こうしてこの鎮守府でのハロウィンは、失意のうちに幕を閉じた。しかしこの秋鮭が、翌日ちょっとした騒動を巻き起こすこととなる。

 翌日の朝、球磨から秋鮭一尾を受け取った割烹着姿の提督が、食堂で朝飯が出来上がるのを待ちわびていた俺と球磨を調理室に呼び出した。

「ハル、球磨。ちょっと来てくれるか?」
「ほいほい?」
「クマ?」

 提督さんに呼ばれて調理室に向かうと、味噌汁のいい香りが調理室に充満していて、ただでさえぺっこぺこだった腹減り具合に拍車がかかった。おなかと背中がくっつきそうってこういう状態のことを言うんだろうなぁ……なんてことを思いながら、球磨と共に調理室の提督さんのそばに向かう。

「すんすん……いいにおいだクマぁー……」
「すんすん……ホントだなぁ〜……」
「似た者夫婦的反応はいいから、ちょっと俺の話を聞いてくれ」
「そんなこと言うなら隼鷹に『提督さんが俺に隼鷹の可愛さをこれでもかと力説してた』ってあることないこと言いふらしますよ提督さん」
「すいませんやめてくださいおねがいします」
「寸劇はいいから、早く用件を言うクマ」

 球磨に促され、提督さんはまな板の上に目線をやった。俺と球磨も提督さんにつられてまな板の上を見ると、昨日俺が球磨にプレゼントして顰蹙をかった、秋鮭一尾がドデンと置かれている。すでに腹は開かれていて、今まさに三枚におろされている最中のようだ。

「球磨の秋鮭だクマ」
「だな」
「これ、買ったのは誰だ?」
「俺です」
「球磨はハルからもらっただけだクマ」
「ハル、正直に答えてほしい。これ、いくらした?」
「はい? プレゼントの値段を聞くってのはちょっと提督さん……」
「いや
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