後編
5.ハッピーハロウィン!!
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くれて」
「こんなん別になんてことない。自己満足だよ自己満足」
これは本当。別に『暁ちゃんのために』とか、『みんなのために』とかそんなことは考えてない。ただ、みんなにプレゼントをあげるなら、暁ちゃんにもあげないとスッキリしないよな……て感じの感覚に襲われたからだ。
「そうクマ。ハルはきっとそこまで考えてないクマ。キリッ」
「お前はうるさいんだよ」
「ぶふっ……ホント仲いいわよね二人とも」
「「冗談は国籍だけにしろ!!」するクマ!!」
怒り心頭でツッコミを入れる俺と球磨を眺めながら、ビス子はなんとも母性に溢れた笑顔を見せた。なんだかやんちゃな子供を見守るお母さんみたいな慈愛に満ちた優しい笑顔だ。……あれ? ビス子にそんな目で見られてるっておかしくね?
「んーん。私は本当にうれしいの。……それに私ね、アカツキの分まで生きるためにも、絶対に轟沈なんかしない」
「急になんつー話をはじめるんだよビス子」
「そうクマ」
「んー……なぜかしら。でも、あなたたちの行く末もちゃんと見届けたいし」
「ハル、この妖怪ゲルマン女を張り倒してもいいクマ? いいクマ?」
「俺が許す。ビス子は昼寝から目を醒ましていただく必要があるようだ」
「ぶっ……まぁいいわ。でも、アカツキの仇は取るわよ。キチンとね」
そう語るビス子の目は、前をまっすぐ見て、おれたちから見えている範囲の、さらに先を見据えているように見えた。さっきまで笑顔だったはずのビス子の眼差しだけから、笑顔が消えていた。
「ビス子……」
「無茶はやめるクマよ?」
「分かってる。無茶はしないわ。私だって轟沈したくないし、ちゃんとマンを見つけて幸せになりたいもの。あなたたちみたいにね」
「やっぱり張り倒していいクマ? いいクマ?」
「だな。そろそろ長い眠りから覚醒していただく必要がありそうだ」
「やれるもんならやってみなさい。私はクマには負けないわよ」
「夜戦に持ち込めば球磨にもワンチャンあるクマ!!」
「あら。私だって夜戦は得意よ? 戦艦たちの中で唯一、夜戦で真価を発揮する艦娘であることを忘れないでねクマ?」
「うがー!!!」
二人のこのやりとりに、俺は笑いをこらえることが出来なかった。一瞬、ビス子の話にハッとしたが、別にビス子は自暴自棄になっているわけではなく、暁ちゃんの轟沈を経て、生き残る意識を固めたようだった。暁ちゃんのためにも、この戦いを生き残っていくと決めたらしい。ならば俺は、もう何も言うことはない。ビス子ならきっと、力強く生き抜いていくことだろう。
一つ懸念があるとすれば、それは『仇を取る』と言い切ったことだ。それだけが、ほんの少しだけ、爪の根本に一つだけ出来たささくれのように、俺の心に残り続けた。
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