ヘンリー姫
[1/2]
前書き [1]次 最後 [2]次話
ラインハット国の王宮。そこでは一人の兵士が少女を追っていた。
「姫様、お待ち下さい!」
兵士が大声を上げるも少女はペロっと舌を出すと、
「待てと言われて待つ奴なんていないよ〜!」
と言うと、笑いながら勢いよく走って行った。
「待ってください、姫様!」
兵士は叫びながら廊下の角を曲がったが不思議な事についさっき曲がったはずの少女の姿はどこにも見えない。
「相変らず逃げ足の早い人だ。全く、どこに行ったんだろうか……」
やれやれと頭を振りながら兵士は業務に戻って行く。
兵士が完全にいなくなるのを見届けると、少女は廊下に積んであった樽から出てきた。
「私を見つけられないなんて、トムもまだまだよね」
そう言って少女は悪童の笑みを浮かべた。
*
「カエルを顔に投げつけた時のトムの顔、とっても面白かったわ」
私はヘンリエッタ。ラインハット国の姫。趣味はいたずらよ。皆からは名前を縮めてヘンリーって呼ばれているわ。
「姉上はすごいですね。いたずらをしても逃げ切れるなんて」
私を褒めてくれているのは、私と半分血の繋がっている弟(そして子分)のデール。あんまり私と似ていない。私の髪と目は綺麗な緑色だけれどもデールは栗色の髪と目だし、顔つきも目元が少し似ている程度。
でも似ていなくてもデールの事は好き。泣き虫で弱虫でおっちょこちょいで頼りないけど、可愛い弟だ。
「まぁね。逃げ足の速さではラインハット一なんだから」
そう言ってデールと笑っていると、目の前に影が差した。
「デールや。またこの子と会っていたのですか」
デールを叱っているのはデールのお母さんで私の継母だ。
私のお母さんは病気で死んじゃって、その後にお父さんと結婚したのがこの人。
正直言って私はこの人の事が好きじゃない。だっていつも私に嫌な事を言ってくるんだもん。
「この子と遊んじゃいけないと言い聞かせたはずでしょう。こんな悪戯ばっかりして女の子としても王族としてもはしたない子と一緒にいたら貴方までダメな子になってしまいます」
ほら、これだ。この人が好きなのはデールで私じゃない。
何でこの人が私の事を嫌いなのかはよく分からない。でも聞こうとすると周りの人たちが慌てるから私には言えないような事なのは確かだ。
「さっ。行きますよデール」
「はい、お母様」
腕を引かれた時に、寂しそうな目で私を見ながらデールはお義母様に連れ去られていった。
一人になっちゃったので自分の部屋に戻って、次はどんな悪戯をしようかと考える。トムのビールにカエルを入れようかなとか、壁に落書きでもしようかなとか。
私がいたずらを考えていると、部屋のドアをノックす
前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ