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ロンドン塔
3部分:第三章
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第三章

「さっきも話したが首がない時もある」
「首を刎ねられたからですね」
「そういうことだ。だが今日はだ」
 その首がだ。あるというのだ。
「よかったな。素の奇麗な王妃様を見られてな」
「ええ、それにしても」
「ああ、俺達には何もしてこない」
 別に襲ってきたり祟ってきたりはないというのだ。
「それは安心しろ」
「さっき仰った様にですね」
「俺達のことは目に入らないらしい」
「じゃあ挨拶とかもですか」
「してこられない」
 それもないというのだ。
「俺達は見ているだけだ。それでいいからな」
「わかりました。それじゃあ」
 場は広場だった。やはり石造りであり夜の暗さと冷たさの中にある。その中で王妃は彼等の横を静かにだ。女官達を連れて歩いている。その姿は何処か透けている。
 ウィリアムは彼女達がそのまま通り過ぎて終わりかと思った。しかしだ。
 女官の前にだ。羽根のついた帽子に紅い服と股間の辺りを膨らませたズボンとタイツ、それに白いマントの巨漢が出て来た。その顔はというと。
 異様に大きく眉が薄く目つきが悪い。髭がどうも悪役めいている。その彼こそは。
「あの方ですよね」
「そうだ、ヘンリー八世だ」
 リチャードが答える。
「あの方がだ」
「そうですよね。何か肖像画そのままですね」
「今日はその姿だな」
「あれっ、ヘンリー八世なんですか」
「時折お顔が崩れておられる場合もある」
 何故そうなるかもだ。リチャードはウィリアムに話す。
「あの方は梅毒だったからな」
「それだけ女癖が悪かったんですね」
「ああ、因果応報だな」
 そうした碌でもない女性遍歴の結果だ。その病に罹ってしまったというのだ。
「それでお顔が崩れておられることもあるからな」
「そういえばエリザベス一世陛下もですね」
「あの方の梅毒が感染していたという説があるな」
「ええ、そうした話もありますね」
「事実はわからないがな」
 だが確かにだ。そうした話もあるというのだ。
「そうなっているな」
「ですね。そんな話もあって」
「だが今はお顔には出ていない」
 ヘンリー八世のその梅毒はだというのだ。
「奇麗なお顔だな」
「不細工ではありますけれどね」
「しかし。こんなことははじめてだ」
 リチャードはヘンリー八世の話からだ。腕を組み難しい顔になった。
 そしてだ。自分の隣にいるウィリアムにこう話すのだった。
「王と王妃がお顔を合わせられるのはな」
「処刑した方と処刑された方がですね」
「こんなことははじめてだ」
 またこう言うのだった。
「果たしてどうなるかだが」
「どうなるでしょうか」
「わからない。だがだ」
「俺達は何もできませんよね」
「あくまであの方々だけの話だ」
 それでだ。何も
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