かしま
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とか遠慮がちに聞いてくる
かしまさんを想像して、急に彼が気の毒になってきた。
「貴様に最大の畏れを、極上の絶望を与える…それこそが俺の存在意義!!」
カーキ色の外套を翻して叫ばれても、既に畏れは半減どころの騒ぎじゃない。
「なのに貴様は!そのガキが順番待ってる横で『やれ』というのか」
――じゃあどうしろというのだ。俺は段々面倒くさくなってきた。
「じゃ、どちらかに日を改めてもらうというのは?」
「それはない」「ないー」
『さっちゃん』が初めて喋った。なんだ君は、足を貰いに来たんじゃないのか。
「俺達のような『怪』にとって最も重要なのはな、『必ず、果たす』ことだ。分かるか」
「…気分で呪ったり呪わなかったりしてもいいんじゃないすか?忙しいんだし」
「貴様な…何故俺達が『必ず、果たす』必要があるかというとだな!!」
「カは仮面のカ、シは死人のシ、マは悪魔のマの、かしまさん」
なんかもう最っ高に面倒になったので、友人に聞いていた『呪文』を先に唱えてやった。かしまさんはふっと表情を消して体を揺るがせ、溶けるように消えた。
「さっちゃん、さっちゃん、あなたにあげられる足はありません」
残った少女は、何か言いたげに口を開いたが、諦めたように目を閉じ…やがてかしまさんと同様に消えた。
丑三つ時の四畳半に独り残され、俺は暫く…色々、考えていた。
「……なぜ、必ず果たす必要があるか、というと……」
やがて、思い至った。
「そうか。怪ってのは、実体がない情報体だから」
果たさなければ『在り続ける』ことが出来ないのだ。
『虚』と断定された都市伝説は、いずれ消える。かしまさんも、4番目のさっちゃんも。
奴らは今、俺の前で消えた。しかし俺の前に実際に現れ、『約束どおり』消えたことで、都市伝説としての寿命を得たのだ。だから素直に消えた。不満はありそうだったが…だが。
「もし誰かからかしまさんの話を聞いてしまったら…さっちゃんの話も聞いてダブルブッキングさせれば怖さ半減、と」
実体がない存在は、とてもゆらぎ易い。
ちょっと出方を間違えただけで、とてもコケティッシュな方向に変質してしまうので、ほんと大変だ。
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