三十話:成れの果て
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いる人間へ危害を加えることも容易だということだ。それが分かりスバルはギュッと唇をかみしめる。今回のガジェットの不自然な行動は男がルーテシアに指示を出したフォワード陣を分断させるための作戦だ。
六課はその性質上、民間人に被害が及ぶようならばそちらを優先させなければならない。つまり、ガジェットに民間人を襲わせるフリをすれば本命のレリックから簡単に引きはがせるのだ。
地上部隊でもレリックを破壊できる者は数名はいるだろうがAMFのせいでほとんどの局員が役に立たなくなる。そういうことなのでどういう状況であっても六課が動かなければならないのだ。
「……危険に晒されている人がいるなら助けないといけないと思ったからです」
「そうか、では次の質問だ。君はどうして助けようと思うんだい?」
「そんなの当然でしょう。誰かを助けるのが六課の、私の義務です」
そう、義務だ。誰かを守る立場にある人間が守るのは義務でしかない。それは当然のことであり決して譲ってはならない考えだ。スバルはこの瞬間まではそう思っていた。何より壊れることがないと思っていた。だが、男の言葉によりその決意は容易く揺らぐ。
「次の質問だ。君の言うその義務は―――強迫観念から来るものじゃないかい?」
男の言葉にスバルは思わず呼吸を止めてしまう。その通りだった。誰かを救わなければならないと義務的に動き続けているだけだった。そこにあるものは強迫観念であって能動的なものではない。
恐怖から逃れたいから、何かを救わなければいけないから、ただ誰かを救おうとし続けた。他者から見れば限りなく能動的に見えても心の奥底では薄々と受動的な考えだと気づいていた。何よりもスバル・ナカジマにとってはそれが全てだった。
「やっぱりか……。だから君は簡単に僕の罠にはまった。強迫観念に突き動かされて君が西側に来るように僕とこいつらの反応をワザとそっちにばらして、君が一人になるように生存者のフリをして引き寄せた。本当に君は愚かだ」
愚かと馬鹿にされたにも関わらず、スバルには不快な感情は湧いてこなかった。それは心の傷を切開されていた以上に男の言葉がどこか自虐的な雰囲気を漂わせていたからでもある。
まるで自分の全てを知っているかのように語るこの男の正体はいったい何者なのだろうかと彼女は背中に冷たい汗を流しながら漠然と考える。
「さて、最後の質問だ、スバル・ナカジマ。ここに六人の人質がいる。僕の左側に2人、右側に4人だ。僕はこのどちらかを今から―――殺す」
「ふざけないでッ!」
あまりの残酷で横暴な宣言にスバルは敬語もやめて怒鳴り声をあげる。だが男はやはり涼しげな顔で気にも留めない。それどころかさらに煽るようにうっすらと顔に笑みを張り付け、言葉を続け
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