『デリ嬢』
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首がすわる頃、乳児保育園に預けることにした。
金銭的なことも含め、未桜は仕事がしたいと思うようになったからだ。
稼ぎたい。
旦那を少しでも自由にさしてあげたいと思った。
同居のままだと、全部お母さんが蒼の稼ぎを握っていて可哀想だと思った。
未桜にできることはひとつ。
最低な女であり最低な母親が此処にひとり存在した。
最低な嫁でもある。
それなりの覚悟はした。
完全にバレる迄は決してバレないようにしなければ。
其れは此の土地ではなかなか難しいことだった。
ただ、未桜が生まれ育った土地じゃないことと、蒼の家族や親戚、友達周りに、風俗を利用する人が居なかったのが唯一の救いだった。
バレるリスクも、それだけですごく減る。
アリバイ会社の事務所、職種や制服などの用意をして貰った。
社長が高松に居た頃の知り合いだと口裏を合わせてくれ、コネ入社として採用して貰ったことになった。
デリは経験有りなので、実技講習など受けなくて良いと言われたが、結局受けることになった。
其れには少し嫌な気になったが仕方ないと言われればそうかもしれない。
チャント技術が有るか、客に出せる商品価値が有るか見極めるのも此の人の仕事だろうから。
講習や写真撮影など済ませるとプロフィール作成に入る。
店の掲示板などで宣伝を始める。
たまたま雑誌の撮影も入ってたので行けと言われて行った。
帰り、アリバイ会社用の時給で計算して貰った日給分を、茶封筒に入れて貰った。
残金は別の封筒に入れてバッグの底に隠した。
家に帰って、どうだったのか聞かれたら、どんな風に言おうか。
その前に、娘を迎えに行って真っ直ぐ娘を見れるだろうか。
ちっちゃい綺麗な手を、此の汚い手で握ることは出来るだろうか。
色々と渦巻くモノを払いのけるように、ドライバーさんが大きい声で未桜の源氏名を呼ぶ。
未桜は自分に言い聞かす。
『汚いのは今に始まった事じゃない。あのバケモノに無理矢理オンナにさせられた日から未桜は汚物そのもの。
別に何も変わっていない。産む前から汚かった未桜は、今デリをしてるからって汚いワケじゃない。
それに、チャント仕事として、手を抜かず誠実に相手してるつもり。汚い仕事とは思っていない。悪い仕事とも思っていない。
女は女ってだけで武器になる。生きる為に其の武器を使って今迄生き抜いてきた。負い目など無い...』
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