後編
4.返事をしろ(後)
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大規模合同作戦という事実や、以前の提督さんの怒気のこもった通話が俺の不安をかきたてたのか……いつもの哨戒任務とは異なり、今日の俺は自室に戻ってから大変だった。何をやっても気が散って集中出来ない。
―― 気を抜いたら即アウトなのが夜戦だクマ
球磨のこのセリフが頭から離れず、何度も何度も繰り返された。テレビを見ている最中、本を読んでいる最中、道具の手入れをしている最中……何度でも何度でも俺の耳元で聞こえ、やっと作業に集中出来るという頃、おれを現実に引き戻す。
忘れようとしても忘れられない、暁ちゃんが轟沈したあの日の衝撃を思い出し、おれの胸に不快な心拍が一拍だけ襲いかかる。心臓を鷲掴みにされたかのような不安感。もし明日、あいつらの誰かが轟沈したとしたら……
――もうヤだクマ……ひぐっ……沈むのはヤだクマ……
あいつは……あの妖怪アホ毛女はこんなことを言いながら泣いていた。あいつはみんなが沈み込んでいた時、自身が傷つくことも恐れずみんなを庇っていた。
……もしそれが、今回もあったとしたら……仲間の誰かの油断や判断ミスに敵がつけこみ、絶妙のタイミングで攻撃してきたら……もし、それを球磨がかばって被弾したら……そしてもし、当たりどころが悪くてそれが致命傷となったら……ネガティブ妄想の悪循環が止まらない。
不意に、店の入口が開くカランカランという音が鳴り響いた。慌てて店内の方を覗くと、そこにいたのは、一升瓶を抱えた隼鷹だった。
「よーハル。あたしゃちょっとヒマなんだ。サシ飲みやろう」
「……作戦中にいいのか? ダンナ抜きで男とサシ飲みってどういうこっちゃ?」
「いいんだよ。提督からも『ハルが不安になってたら、話相手になってやってくれ』って言われたんだから」
そうかい。んじゃたまにはサシ飲みでもやるか。……提督さん、隼鷹、ありがとう。
一升瓶の蓋を開け、日本酒をグラスに注ぎ、二人で乾杯する。つまみは裂きイカだ。
「初めて一緒に飲んだ時、たしかお前に裂きイカを鼻に突っ込まれてたな」
「懐かしいね〜……もう何年も前な気がするよ。それだけハルがここに馴染んでくれたってことだね」
二人で裂きイカをつまみながら、静かに酒を飲む。しばらく飲み進めていくと隼鷹のほっぺたに朱が差し、色っぽさに拍車がかかった。色っぽさ……なんか違うな。隼鷹の場合は艶って言えばいいのかな?
「……提督ね。喜んでたよ?」
「ん? なんかやったっけ?」
「あの、『却下です』ってやつ。提督、ハルが執務室出て行ったあと『そっかー……残ってくれるか……却下してくれるかー……』って、何度も何度も嬉しそうに呟いてたよ」
意外だ……そんなことでそんなに喜ぶものなのか提督さんは。
「ハルは知らないんだよ。この
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