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鎮守府の床屋
後編
4.返事をしろ(後)
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「ま、マジで……? 俺達そんなに仲良さそうに見える?」
「仲良さそうっつーか、心が繋がってる感じって言えばいいかなぁ……分かり合ってるって言うか……」
「マジかよ……」

 空になった俺のグラスに、隼鷹が日本酒を注いでくれた。グラス半分ほどまで注がれたところで、俺は手のひらで隼鷹を静止し、隼鷹もそれで注ぐのをやめる。

「だってさ。暁が沈んでしばらくした時のこと、覚えてる?」
「ああ。球磨がココに一晩中いた時のことだろ?」
「球磨はあんたを頼ったし、あんたもそれに応えたんだよねぇ?」
「まぁなぁ……」

 隼鷹が注いでくれた日本酒を一気に飲み干したあと、グラス越しに隼鷹を見た。グラスを通してだからなのかは分からないが、隼鷹の頭の上には、落書きのようなもじゃもじゃ線が見える。いまいちハッキリしない俺の態度に釈然としないらしい。

「でもさハル。いつかは決断を迫られるかもしれないよ?」
「……」
「素直にならざるを得ない瞬間があるかもしれない」
「……どんな時だよ」
「自分で考えるんだね」

 少しイライラしながら、隼鷹は自分の頭をボリボリと掻いたあと、自分のグラスに残った酒を飲み干し、次を注いだ。お前、飲むなぁ……

「まぁねー。今日はサシ飲みって言ったじゃん。とことん付き合ってもらうよー」
「決断を迫られる時ってどんな時だよ……」
「さぁねぇ……でも案外、つい素直になっちゃう瞬間が来るのかもね。意識して素直になったり、決断が迫られるんじゃなくてさ」

 おかわりを注ぎ終わり、裂きイカを口に咥えて上下にピラピラ動かす隼鷹。ちっくしょう。こいつを艶っぽいとか思ってた数分前の自分を張り倒したい。ただのイヂワル女だこいつは……。

「ハルはもういいの? もっと飲もうぜー」
「……酒臭い息でアイツを抱きしめたくないっ」
「言うねぇ」
「うるせー……ちょっと酔ったかな……」
「それぐらい素直になりゃいいのに」
「黙れ妖怪艶女」

 ちくしょう……どいつもこいつも俺と球磨をくっつけようとしてやがる……。

「ハル。これだけ言っとく」
「んあ?」
「あたしたちみんな、あんたと球磨のこと、応援してるから」
「……」
「あんたと球磨がくっついたら、こんなにうれしいことはないよ。提督も喜ぶ。みんなも祝福してくれるさ」
「そっか……」

 その後、隼鷹は色々な話を聞かせてくれた。俺の前にこの鎮守府に来た美容師のアキツグさんと川内の妹、神通との悲恋……かつて北上と無敵のコンビ『ハイパーズ』として活躍していた大井っち……隼鷹の姉、飛鷹の最期……隼鷹と提督さんの馴れ初め……

「マジか〜……まさか提督さんからだとは思わなかった」
「ひどっ。でもまぁうれしかったよ。あたしを選んでくれてさ」

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