後編
4.返事をしろ(後)
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……隼鷹はそういったものを今語っていたはずだが、その表情は、そんなポジティブなことを語っている顔ではなかった。
グラスに入った日本酒に口をつけた隼鷹は、遥か遠くにいる誰かの背中を眺めながら、軽いため息をついた。その仕草は艶っぽく、そして見ているこっちの目に涙が溜まるほど、憂いを帯びていた。
「今度はあたしが聞いていい?」
幾分明るくなった声と少しだけ輝きが戻った眼差しで、隼鷹が俺を見つめた。今の彼女の目に宿っているのは好奇心。
「なんだよ?」
「球磨とはどうなのさ?」
いつもならここで『うるせえこの妖怪飲兵衛女!!』て言うところだが、さっきの話を聞いてからだと、さすがにそうも言えない。
「……どう、とは?」
「あんたたち、仲いいだろ?」
「まぁ……なぁ」
「ハッキリしないねぇ……」
俺のハッキリしない返答にがっかりしたのか何なのか……釈然としてないような表情を隼鷹は見せた。
でもさ。正直よくわかんないんだよ。確かにあいつといると面白いし、退屈しなくて楽しい。あいつとどうでもいいことで言い合いするのも楽しいし、あいつを見てドキッとしたこともある。
「でもあいつと俺の関係ってさ。やっぱ仲間なんだろうなーと思うよ」
「あたしらと同じってこと?」
「同じじゃないだろうな……一番仲いいし。でも、多分今はそれが一番しっくりくる」
「かぁ〜……ッ」
さっきまで艶っぽい顔を見せていたとは思えないようなおっさん吐息を吐き出す隼鷹。おいどうした妖怪飲兵衛女。さっきまでの艶っぽい隼鷹はどこ行ったんだよ。
「いやぁ、素直じゃないねぇと思ってさ」
「そうかねぇ……?」
「うん。北上の言ってた通りだね」
「あのアホ……なんて言ってたんだよ」
「『早く素直になればいいのに』って。『そしたらくっつくのに』って」
あのバカヤロウ……なんつーことをいちいちみんなに話してるんた……。
「北上は北上で心配なんだよ」
「心配?」
「うん」
面白がってるだけだと思ってたら……心配ってどういうことだ? 俺と球磨の関係性が心配?
「うん。北上としては早くくっついてほしいんだろうね」
「なんで?」
「んー……まぁ単純に姉に幸せになってほしいっつーのもあるんだろうけど……」
「けど?」
「ハルの周りは女の子がいっぱいってことだよ。これ以上は言わない」
「? ??」
「見てる子は見てるっつーか……ねぇ」
意味がさっぱり分からん……
「そういや北上が『球磨姉はおすすめ』って言ってたな」
「だろー? 第一あんたら二人、傍から見たらもう恋人同士みたいなもんでしょ」
ヤバいまったく自覚がない……そんなにいちゃいちゃしてるように見えるのか俺と球磨は……。
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