暁 〜小説投稿サイト〜
レモン爆弾
1部分:第一章
[1/2]

[1] 最後 [2]次話

第一章

                          レモン爆弾
 梶井基次郎の小説に『檸檬』というものがある。
 それをだ。彼、花輪シオンは教室で読んでいた。
 黒と茶色の混ざった髪をいい加減にまとめた感じにしている。二重の目はちゃらい外見の中でかなり優しさを見せている。背は一七〇程で身体つきは細い。その彼がだ。
 その小説を読んでだ。こんなことを言い出したのである。
「よし、俺もこれしようか」
「っていきなり何だよ」
「何言い出すんだよ」
 いきなり声をあげた彼にだ。周囲が問い返す。
「何か本読んでるけれどな」
「梶井基次郎?御前文学読むのか」
「バンドだけじゃなかったのか」
「意外な趣味だな」
「妹が読んでんだよ」
 その妹の影響でだ。文学を読んでるというのだ。
「あいつ太宰治とか三島由紀夫好きでさ。俺にも薦めてきてな」
「で、そうした本も読んでるのか」
「その梶井基次郎にしても」
「そういうことなんだよ」
「そうだよ。いや、こうして実際に読んでみると結構面白いな」
 読んでからの感想である。
「レモンを本屋さんの本棚に置いて逃げるのか」
「ああ、それ京都の本屋さんでやったらしいな」
「それ今も真似する人いるんだろ?その本屋さんで」
「そんなこと聞いたぜ」
「みたいだな。だからな」
 それでだと。シオンは笑みを浮かべて言う。
「俺もやってみるか」
「おいおい、変な影響受けてるな」
「本屋さんにレモン置くのか」
「そうして逃げるんだな」
「そうするっていうのか」
「そうだよ。やってみるか」
 笑みのままで言うシオンだった。
「いっちょな。楽しくな」
「まあそれ犯罪じゃないからな」
「悪戯にしても些細なものだしな」
「店員さんにレモン差し入れする様なものだしな」
「別にいいだろうな」
「そうだよな」
 そんな話をしてだった。シオンは実際にその悪戯をすることにした。そして彼が所属している軽音楽部での活動が終わってからだ。スーパーでだ。
 レモンを一個買った。その彼を見てだ。
 同じ軽音楽部の面々、彼と一緒に帰っている彼等がだ。彼に尋ねたのである。
「何か御前考えてるな」
「クラスの奴等が言ってたぜ、梶井基次郎の本読んだってな」
「じゃあそれか?檸檬か」
「あの本のあれするんだな」
「そうするってか」
「そう思ってなんだよ」
 彼は笑ってだ。彼等にも言うのだった。
「こうして買ったんだよ」
「やっぱりな。わかりやすいな」
「実際にそれやる奴いるんだな」
「まあ面白いって言えば面白いな」
「お約束だけれどな」
「じゃあ今から本屋行くか」
 笑顔で言うシオンだった。そうしてだ。
 彼はそのレモンを手にスーパーを出る。夕方のスーパーは結構繁
[1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ