暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
後編
3.返事をしろ(前)
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ってるクマ?」
「話だけならな。加古の姉ちゃんなんだろ?」
「そうクマ。その古鷹は、夜戦で沈んでるクマ」

 そっか。なら今回の作戦は、何か思い入れみたいなのが生まれてもおかしくはないかもな。

 球磨とそんな話をしながら二人で昼寝ポイントに向かうと、加古はまだいた。川内の言う通り寝転んだ体勢で、目はパッチリと開いていた。頭には、黄色いちょうちょが停まっていた。

「加古」
「ぁあ、ハルと球磨じゃん。二人で昼寝しに来たの?」
「昼寝しにきたっつーよりはお前の様子を見に来た。昼寝してないって聞いたから」
「私だって寝ないで真面目に考え事してる時もあるっつーのに……」

 ちょうちょがヒラヒラと飛び立ち、加古は自身の頭をボリボリとかいた。よく見たら、そんな加古の傍らには今日は一升瓶ではなく、艤装の一つである連装砲が置いてあった。

「……随分ぶっそうなモンを傍らに置いてるなぁ」
「何か心配事でもあるクマ?」

 その連装砲を手に取りつつ、俺と球磨は、加古を挟むように彼女の隣りに座った。

「あー……いやその連装砲、古鷹の連装砲なんだよね。今晩の作戦で使おうと思って」
「へー……」
「ハルは古鷹って知ってたっけ?」
「話だけは聞いてる」

 この昼寝ポイントで何回か幻を見たことはあるけどな……。

「古鷹、夜戦が得意でさー」
「確かに夜戦が得意な子だったクマ」
「……だから私も、これ持っていって、古鷹の力を借りるんだー」

 恥ずかしそうにはにかみながらそう語る加古の傍らには、困ったような笑顔を浮かべている古鷹がいた。大丈夫だ。それがこの連装砲のおかげなのかどうかは分からないが、加古は古鷹が守ってくれる。加古は大丈夫だ。

 作戦開始直前まではこの場所に一人でいたいという加古の要望を受け入れ、おれたちは昼寝ポイントをあとにした。加古、お前気づいてないだろ。お前は一人だと思っているようだが、そばには古鷹がいるんだぜ。言ったらいけないような気がするから言わないけどな。

 その後も作戦開始までは静かな時間が流れた。いつものように馬鹿話を繰り広げながら飯を食い、その後は一人で風呂に向かう。いつもは球磨と北上と三人で浴場まで行くのだが、今晩は出撃があるため、みんなは風呂には入らないそうだ。

「ハル。じゃあ行ってくるクマ」
「気をつけろよ」
「大丈夫クマ。ちゃんと帰ってくるクマ」
「北上、球磨を頼むぞ」
「ハル兄さんのお願いとあらば、この北上さん、聞いちゃいましょー」
「アホ。……みんな、無事で」
「ほいクマ」
「まかせてー」

 そう言い残し、夕食後に球磨と北上は執務室に入っていった。……ちゃんと帰ってこいよ……。

 風呂から上がり、今日は球磨と北上がいないからラムネが飲め
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