第九話。千夜一夜夢物語C悪夢
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背後から聞こえてきた声に振り返ると、中央広場にあるベンチ。かつて俺とキリカが座った事のあるベンチにいつからいたのだろうか、そのベンチに腰掛けながらアリサがニヤケ顔をしていた。
「アリサさん」
「最初が超有名なロア『赤マント』だなんて、やるじゃないかリア。流石は私が認めた『主人公』だな?」
「ロア……『主人公』……このスナオさんや、さっきのヤシロさんのような人ですね?」
「ああ、そうさ。この世の中には、そいつみたいに『噂通り』に動かないと消えてしまう、都市伝説のオバケになっちまった人間がいるんだ。スナオは『怪人赤マントは少女を攫う』という噂に縛られたせいで、少女を攫い続けないと消えてしまう存在になってしまっていた、ってわけだな。
ちなみにそれをハーフロアって言うんだが」
「ハーフ、ですか」
理亜はアリサの話をスナオちゃんの背中や肩をポンポン、よしよし、撫でながら聞いている。
「ああ。んでもって、純粋に何もないところから噂話だけで生まれたオバケを『ロア』って言う。私みたいな、純粋なオバケのことだな。オバケでもあり人間でもある一番きっつい『ハーフロア』よりも多少は楽な立場ってことさ」
「スナオさんが、人攫いをする『赤マント』であると噂された、ということですか?」
「その通りだ。そしてその噂を子供だけでなく大人まで信じて、そしてこの『世界』の意志すらもその噂を信じた。故に、スナオ・ミレニアムは『怪人赤マント』になった。ま、どうしてそうなったかは後で当人に聞いておくれ」
かつて、一之江から聞いた話でも同じことを告げられたが……世界の意志。
この世界は、そんな曖昧な認識で動いているという事実に俺は寒気と怒りを感じてしまう。
「世界の意志……」
アリサに告げられた理亜もまた、僅かな怒りを声に含んでいた。
自分達が当たり前のように生きてきたこの世界は、なんと曖昧で脆いものなのかをなんとなく理解させられたからだ。
「まあ、世界なんてものは人類の無意識・統合意識って考える説もあるがね」
「そうですか。人が、世界が、スナオさんみたいな子を苦しめているのですね」
理亜はぎゅっと、力強くスナオちゃんを抱き締める。
理亜は怒っていた。この世界に対して。そういったシステムに対して、遣り場のない怒りを覚えたのだろう。
「さて、ここで取り引きだ」
そんな理亜の怒りを見てアリサは口の端を釣り上げた。
「お前が私と組んで『千夜一夜』っていう『主人公』になれば、そんな『ハーフロア』の物語だけを消し去って、人に戻してやることも出来る」
「っ??」
そのアリサの言葉を聞いて、スナオちゃんは慌てて顔を上げた。
真っ赤な両目を見開きながらアリサと理亜を交互に見
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