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101番目の舶ィ語
第八話。千夜一夜夢物語Bハグは嬉し涙と共に……
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__きっと兄さんなら、そんな風に言うと思います。だから______」

ぎゅっと、スナオちゃんの手を握り締めたまま、理亜はその言葉を口にする。

「私、貴女に攫われてもいいですよ?」

「……え、リア……?」

スナオちゃんの目が見開かれる。
自分が襲った相手から、攫われてもいい、そんな言葉を言われるなんて。
信じられない。
スナオちゃんの顔はそんな顔をしていた。

「私は兄さんの見ているものを見たい、兄さんの感じているものを感じたい。尊敬する……大好きな兄ですから。兄さんが私を大事にしてくれるように、私も兄さんを大事にしたいんです。だから、私はこうします」

スナオちゃんの目が驚きでさらに潤み始めるのを見ながらも、理亜は言葉を続ける。

「スナオさん、私は貴女がどんな罪人であろうと、どんなオバケであろうと、泣くのは嫌です。そして消えられるのはもっと嫌です。なのでそんなこと、私が絶対に許しません。
そして……もし、私を攫って少しだけでも後悔するようなことがあれば、絶対に攫われてあげるつもりはありません」

「リア……」

ポロポロ、スナオちゃんの目から涙が溢れ出す!

「だって、そうでしょう? スナオさんが私を攫って『あー、攫うのすっきりした! 超素敵』って気分でないと、もし攫われて殺されるだとしても、攫われ甲斐がないじゃないですか。なので、スナオさん」

「…………ん…………」

「一緒にいてあげますから。いつでも攫われてあげますから、だから、泣いたり、消えたりしないで下さい。せっかく今日、お友達になったんですよ?」

「う……あ……うあああああああああん??」

理亜の胸にそのまま抱きつき、顔を埋めるスナオちゃん。
理亜はそんな彼女を静かに抱き締めていた。

「はい、これが、待望のハグ、ですよ」

「ふえええぇぇぇ、リアぁぁぁあ??」






ピロリロリーン。



Dフォンが二人の友情を祝福するかのように、軽やかなメロディーを奏でる。
俺はそれで理解した。
こうして、スナオちゃんは理亜の物語になったのだと。
理亜は胸で泣きじゃくるスナオちゃんの背中を撫でながら、小さな溜息を吐く。

「攫った方がいるのなら、帰してあげてくれませんか?」

「ん……解った。みんなまだ生きてるから、家に帰しておくね」

「はい。……よかった、生きているのですね。はふっ」

溜め込んでいた息を吐き出すかのように、溜息を吐くと。スナオちゃんの頭をヨシヨシと撫で続ける。
解放された人達が『赤マント』は解決した、という噂を流してしまえばスナオちゃんの存在は危険な事になるのかもしれないが、それでも理亜はそうしたかったのだろう。
そう思った、その時______
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