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101番目の舶ィ語
第八話。千夜一夜夢物語Bハグは嬉し涙と共に……
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たが。驚くべきことに同じことを理亜はやっていた。
俺とは違い、ヒステリアモードにもなれないのに。
理亜は、戦いの中で、回避と観察を重ねながら『赤マント』の弱点を見抜くべく動いていたんだ。
『それが失敗するかもしれない』という恐怖を乗り越えて。自分の方法を、信じて実行した。
運命を引き寄せたかのように。

「うくっ……うううっ!」

手を離されたスナオちゃんは抵抗する力すら失ったのか、そのまま地面に座り込んで泣き出してしまう。

「うくっ、どうしよう、どうしよう……このままじゃ、わたし、消えちゃうっ」

その目から大量の涙を流す。
そうか。彼女も一之江と同じなんだな。
ハーフロアである彼女は、誰かを攫わないと消えてしまう。
学校にいる時、理亜にバイバイと手を振った時から……或いはもっとまえ、初めて教室で出会った時から攫う対象を理亜に決めていたのだろう。『赤マントのロア』の標的として。だが、その理亜は一筋縄でいくような相手ではなかった。
理亜を攫う事に失敗してしまい、このまま『少女を攫えないロア』として噂が定着してしまえば、彼女はその存在ごと、消えてしまうかもしれない。

「消えちゃう、ですか?」

「ふぇぇぇ?? やだ、やだよう、消えたくないー??」

スナオちゃんは理亜の問いかけには答えずに、泣きじゃくってしまう。

「ん……私が尊敬する兄さんなら。女の子が泣くのを放っておいたりしませんね」

スナオちゃんは手慣れていた。
おそらく、こういった犯行は初めてではないのだろう。
決して許されることではない。
被害者達からすれば決して許しはしないだろう。
だけど……俺は。
俺はこんなに泣いている女の子がいたら、自業自得といって見捨てることなんてできない。

「ううん……もし、私を攫えないと貴女が消えてしまうというのなら、私の兄はきっと……こう語るのではないでしょうか」

「ひくっ、ふぇ?」

理亜はスナオちゃんの前にしゃがみ込むと、その両手取って、自分の胸元に引き寄せた。

「スナオさん、みたいな子が誰かを攫う理由が……一人でいたいくないから、誰かと一緒にいたいから、みたいなものだったとしたら。自分でよければいくらでも一緒にいる、と」

優しく語りかける理亜の顔をスナオちゃんはハッとした顔で見つめる。

「ただ、嫌がらせとか、困るのを見て笑うとか。そういった悪い理由なら許せません、ですが、もしそこに寂しい気持ちがあるのだったら、絶対に見逃せないし、見逃す理由もない、と」

「リア……」

スナオちゃんの手を、自分の胸に押し当てて、安心させるかのように笑みを浮かべて頷くと。

「もし、誰かを攫わないとスナオさんが消えるというのなら。自分は攫われてもあげてもいい____
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